感情を伝えて人間関係を強固にする

伝え方には訓練が必要だ。感情に流されて伝えるのはご法度。(1)~(3)のとおり、事実を率直に伝えるに留め、相手を非難しないようにする。「あなたの仕事のしかたはおかしいと思います」とか、「それ、あなたが忘れていたから今日急に依頼をしてきたのですよね?」といった表現はしない。これは相手が目下であっても同じだ。

まずは社内の気心の知れた先輩で練習してみよう。きっと受け止めてくれるはずだ。

どこでも誰とでも働ける人、働く環境や仕事の内容が変わっても成果を出せる人というのは、アサーティブネスに長じた人が多い。「それは困ります」「とても残念です」「こうなるとは思いませんでした」としっかり自分の感情を隠さず伝えることで、むしろ人間関係を強固にしていくスキルを身につけよう。

アンガーマネジメントは「我慢」ではない

では、もっと強い怒りが湧いたらどうすべきだろうか。近年、職場では多様な価値観を受け入れることが求められるようになった。価値観が多様化すれば、認め合う面が増える一方で、見えない衝突も増える。衝突が増えればストレスや怒りの感情が増大する。

誤解が多いようなので最初に伝えておくが、アンガーマネジメントとは「怒りを抑え込む」手法ではない。怒りをコントロールし、上手に付き合うための方法だ。

怒り自体は時に強いモチベーションを生み出す原動力にもなるため、無闇に抑え込むことはかえってもったいない。

ただ、絶対にやめたほうがいい怒り方がある。イライラしたときや怒りを感じたとき、一番やってはいけないことは「反射」だ。感情に任せて物にあたったり、売り言葉に買い言葉を返したところで、うまくいくことはまずない。「反射」をやめるのは実は簡単だ。今すぐ実践できる対処法を2つ紹介しよう。

(1) 6秒待つ

怒っているとき、脳の大脳辺縁系と呼ばれる部分が活発に働き、感情が支配している状態だ。一方で、脳は前頭葉と呼ばれる部分を使って理性的に対処しようとする。ただ前頭葉が働き始めるにはタイムラグがあるため、脳を感情から理性に切り替えさせるために、6秒程度の時間が必要とされる。

(2)深呼吸する

「6秒待つ」間に深呼吸をしよう。ちょうど1回できるはずだ。昨今注目を浴びている瞑想やマインドフルネスにも用いられている禅の「三調」という教えがある。「調身・調息・調心」、つまり心を整えるためにはまず姿勢を調え、次に呼吸を調える。

怒りに支配されているときは緊張感が強まり、呼吸が浅くなっていることが多い。逆を言えば、深く呼吸をすれば感情をコントロールしやすくなるのだ。