読んだことがある、あるいは概容を知っている日本の古典や名著としては、『こころ』『雪国』などが上位に挙がったが、世界の古典や名著については、全体的に認知度が低く、「すべて知らない」と答えた人が5割近くに上った。
「歴史教養書などを活用して、歴史や文学の概容はひと通り学んでおくといいでしょう。古典はとっつきにくい印象ですが、わかりやすく漫画や小説にしたものもあるので、それらを読むのも十分意味があります」(児玉さん)
芸術・映画・音楽編▼一流のアートに触れて「美意識」を鍛えているか
格式が高い教養のハードルの下げ方
芸術に親しむことも、教養の大切な要素といえる。しかし、西洋絵画やクラシック音楽などを鑑賞するのは、「格式が高い」と感じて手を出せないと感じている方が、少なくないのではないだろうか? 事実、アンケートでは、絵画や音楽などを「得意分野にしたい」と答えた人が多かった。
「今では音楽や美術のわかりやすい入門書が充実しているので、そこから手をつけるといいでしょう。例えば、貴族のための小さな宮廷音楽が市民革命後に大衆のものになった結果、巨大なコンサートホールとオーケストラが誕生しました。そうした背景を学ぶとより楽しく身近になります」(児玉さん)
その一方、映画については、肩肘を張らずに楽しめるためか、全体的に認知度が高く、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『タイタニック』は、約7割の人が「見たことがある」と答えた。しかし、映画鑑賞の頻度(家庭を含む)については、「ほとんど見ない」と答えた人が26.5%、「年に1回」と答えた人が11.1%に上っており、日常生活で映画に親しんでいるとはいえない状況だ。
旅行・ワイン・グルメ編▼仕事以外の人生の楽しみを満喫しているか
旅行や食が教養力を高める
旅行経験や食生活などの嗜好も、教養のバロメーターになる。
これまでに「いくつの都道府県を訪ねたか」の結果は図のとおりだ。ちなみに47都道府県すべてを訪問したことのある人は8.4%いた。また、外国訪問数は、「10カ国以上」と答えた人が22.9%もいて、社会のグローバル化を実感させる結果となった。
食生活に関しては、ワインの原料となるブドウの品種については、馴染みのあるブドウ以外は、認知度が低く、“ワイン通”が少ないことがわかった。
実は、これらはほかの教養とも密接に関連している。ワイン好きの侍留さんは、「歴史や地理に詳しいほうが、ワインをより楽しく飲めます」と言う。児玉さんも、「例えば、海外の歴史小説が好きな人は、世界史や語学にも関心を持つようになり、海外旅行や美術館巡りにもよく行くようになります。芋づる式に教養の幅が広がっていくわけです」と説明する。
まさに「好きこそ物の上手なれ」で、人生の楽しみを増やすことは、教養を高めることにも役立ちそうだ。
現役専門予備校の老舗「市進予備校」、映像授業「ウイングネット」の現代文担当講師。著書に『世界でいちばんやさしい教養の教科書』。
侍留啓介
三菱商事入社、マッキンゼー・アンド・カンパニー等を経て、外資系投資会社勤務。田中学習会等で取締役。MBA(シカゴ大学)、博士(京都大学)。著書に『新・独学術』