ところで、ビジネスパーソンの教養は、どんな現状なのか。プレジデント誌が管理職・役員約1000人(40~50代中心)に、教養に関するアンケート調査を行ったところ、こんな実態が浮き彫りになった。
専門以外の得意分野では、「歴史」(29.6%)を挙げた人が最も多かった。「学校の授業や小説、TVドラマなどで、日頃から親しんでいるからでしょう」(児玉さん)。その一方、今後、得意になりたい分野でも、歴史を挙げた人が最も多かったが、絵画や哲学などを挙げた人も比較的多い。侍留さんは、「自分がよく知らないが、興味のある分野。ある意味ではコンプレックスのある分野が絵画や哲学だと言えるのではないでしょうか」と分析する。
侍留さんは、アンケート結果全体について、「日本のビジネスパーソンの多くは、専門外の知識、つまり教養が不足しています。大学入試以降、まともに勉強をしていないからです。学び直しが必要です」と評価をしている。
調査方法●NTTコム リサーチで実施。全国の管理職(課長クラス)以上の会社員・会社役員・公務員・団体職員の計1095人から回答を得た。調査日は2019年4月10日。
語彙力・哲学編▼日本語と英語をスマートに使いこなせているか
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言語能力を左右するのが、読書だ。読書の質と量が、語彙力を決定づける。また、本を読むことは、「論理力を鍛える」(侍留さん)ことにもつながる。「経営者や管理職は仕事が忙しく、読書の時間が取りにくいかもしれません。多忙な人には、車での移動中や散歩中にも聞けるオーディオブックがおすすめです。私は4倍速で聞いていますが、読書より短い時間で本を消化できます」(同)。
ことわざや四字熟語は、9割近くの設問で50%以上が「知っている」との回答。「ことわざは、日常生活でもよく使い、馴染みが深いからでしょう」(児玉さん)。
その一方、哲学用語については、日常生活であまり使わないためか、認知度の低い言葉が多かった。
英語力はどうなのか。侍留さんは「私の肌感覚でいうと、TOEICは900点ないと話になりませんね。TOEICはもともと日本人と韓国人向けにつくられたレベルのもので、集中して勉強すれば数カ月で達成できます」と力説する。しかし、アンケート結果によれば、「900点以上」と答えたのは、わずか5.7%だ。
歴史・文学編▼出世するビジネスパーソンの必読書は何か
歴史が得意は思い込み
「歴史は得意分野」と答えた人が多いだけに、「説明ができる日本史上の人物や出来事」は好成績。しかし、戦前に首相を何度も務め、「最後の元老」とも呼ばれた西園寺公望を、7割強の人が知らなかった点について、侍留さんは「小説やTVドラマにあまり登場しないからでしょうが、歴史上の人物の重要性を客観的に理解できていないようでは、歴史を知っているとはいえないのでは」という。
その一方、「説明ができる世界史用語」については、教科書レベルにもかかわらず、過半数の人が答えられた設問は、わずか2割だ。