「描く動作をしながらダンス」ができるように

【柳川】今回の変身グッズは、「変身☆スターカラーペンダント」と「プリンセススターカラーペン」という2個セットで、インクボトルとペンをモチーフにしていますが、これは「描く動作をしながらダンス」ができるようにと考えました。これも達成感を味わえる仕掛けです。玩具でなりきりができる要素をどう映像に組み込んでいくかは、バンダイさんと一緒に考えています。

【原田】プリキュアは4人いるから、変身セットは4種類ですか?

【柳川】「変身☆スターカラーペンダント」は共通で、挿すペンがキャラクターごとに用意してあります。ただ4人のプリキュアのペンとは別に、12星座それぞれに設定されたプリンセスのペンもあるんですよ。

【原田】でも、12人もプリキュアは出てこないでしょう?

【柳川】12人もいるとキャラクターの成長を描ききれないですし、12も星座があると、全部の星座を平等に扱ってあげられない。だから今回は、4人のプリキュアが3星座ずつ春夏秋冬で担っている形にしています。ある特定の星座の子が悲しくなったりしないように、みんな平等に、というのはかなり意識しました。

【原田】子供相手だから、絶対に差別感や劣等感を抱かせてはいけないわけだね。

劇中に登場するアイテムを「商品化」できた理由

【原田】しかし、アニメのプロデューサーとしてはあまりに考える領域が幅広い。商品化までセットで考えないといけないんだね。子供の数が大幅に減っているから、昔のように視聴率だけで稼げるわけではなく、イベント、商品、映像配信などのトータルで考えなければいけないんだろうね。

【柳川】私はプロデューサー職に就く前、3年間営業にいたので、その経験を生かして営業がしやすい作品にしたつもりです。だから「スタプリ」は関連商品との連動が例年以上に高いんですよ。

【原田】そうなんだ! 本当に今回のプリキュアはこれまで以上に新しいチャレンジが満載なんだね。すばらしい。商品は変身グッズだけではない、ということかな?

【柳川】劇中で登場した宇宙食のグミや、そのグミが入っているポーチ、キュアミルキーが乗っているロケットドーナツなども商品化されています。むしろ商品にならないアイテムはないんじゃないかというくらい。

【原田】そんなにたくさん商品があったら、今後、きっと僕はたくさん買わされることになるんだろうね(涙)。子供としては「なりきり欲」がたくさんのシーンで実現できて本当に楽しいんだろうけど、「財務大臣」の親としては複雑ではある……。今までのシリーズはそこまで商品化と連動していなかったんですか?

【柳川】もちろん連動していましたが、これまでは「作品があって、商品をつくる」という流れが大きかったのを、「商品にしやすい作品」という出発点で考えたんですよ。(後編に続く)

原田 曜平(はらだ・ようへい)
サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。
柳川 あかり(やながわ・あかり)
東映アニメーション プロデューサー
1990年生まれ。2013年慶應義塾大学経済学部卒業、東映アニメーション入社。2018年10月より営業企画本部 第一映像企画部 第一映像企画室プロデューサー。企画・製作に「おしりたんてい」「デジモンユニバース アプリモンスターズ」などがある。
(構成=稲田豊史)
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