今年の「スタプリ」は前日の夜に眠れないほど楽しい
【原田】僕はもう20年も若者研究を続けているのだけど、柳川さんは10年くらい前に博報堂で立ち上げた「若者研究所」の最初期のメンバーなんですよね。アニメは昔からやりたいとおっしゃっていましたけど、まさか本当にプロになるとは思ってもいませんでした。
【柳川】若者研に参加していたのは高校生の時ですね。アニメにハマったのもその頃で、新卒で東映アニメーションに入社したんです。
【原田】この2月にスタートした「スター☆トゥインクルプリキュア(以下、スタプリ)」のプロデューサーに就任されたと聞いて、びっくりしました。実は、うちの娘が毎年「プリキュア」にハマっていて、グッズを大量に買わされているんですが、今年の「スタプリ」は前日の夜に眠れないほど楽しいっていうんですよ。
だから今日は、今までのプリキュアと今回の「スタプリ」は一体なにが違うのか、それを僕の領分であるマーケティング的な見地から解明できたらなと。アニメに限らず、他の業界でものづくりをしている人にも、きっと今の子供心をつかむマーケティングのヒントになるでしょう。
【柳川】なるほど、わかりました。
とにかくスピード感やテンポを優先させた
【原田】早速なんですが、今年の「スタプリ」がこれまでの作品以上に、うちの娘世代の子供にウケている理由はなんだと思いますか?
【柳川】前作の「HUGっと!プリキュア」(2018年2月~2019年1月放映)に比べて、直感的・視覚的に楽しめる要素を増やしたせいかもしれません。「HUGっと!」は比較的ドラマ性が強かったんですが、「スタプリ」はちょっと方向転換して、エピソードごとのメッセージは込めつつも、もう少し感覚的な楽しさを重視しました。
たとえば第1話は、「ジェットコースターに乗っているような、勢いのある映像にしたい」とオーダーしたんです。その結果、主人公がいきなり地球から宇宙にロケットで飛び出して戻ってくる、という展開になりました。物語上、最初から宇宙に行く必要性はあまりなかったんですが、ここはあえて。
【原田】相手は子供ですからね。マーケティングの前提として、理屈じゃなくて、「直感的に楽しい」という要素が絶対に重要ですよね。大人が考えるにあたっては一番難しい部分だと思いますが。
【柳川】そうですね、とにかくスピード感やテンポを優先させましたから。