親世代も引き込むための「80年代」テイスト

【原田】しかし、プロデューサーとしては若いですね。

【柳川】平成2年(1990年)生まれです。アニメの世界は35歳前後でプロデューサーになる方が多いので、少し若いかもしれません。私は「スタプリ」の企画書に、世界観のトーンとして「ネオ80's」と「宇宙かわいい」という2つのキーワードを掲げました。これは客観的にみれば、私の世代ならではの発想かもしれません。

【原田】「ネオ80's」から行きましょうか。「80年代」は、むしろバブル世代のおじさんからも出てきそうなキーワードに思えますけど、それとはまた違うんでしょうか?

サイバーエージェント次世代生活研究所・所長の原田曜平氏

【柳川】私は80年代を過ごした世代ではないんですが、バブル期の前向きな感じに強い憧れがあります。その意味での「80年代なのに新しい」が「ネオ80's」なんです。その上で作品にどう落としこんだかというと、絵柄やデザインの部分ですね。スタッフには、80年代のファンシー雑貨やアニメ作品の画像をいっぱい並べて、「この世界観で」と指示しました。

【原田】90年生まれが描く80年代は興味深いですね。きっとかつての実際の80年代とはまた違った魅力が出てくるかもしれませんね。具体的にはどんな世界観をイメージしているんでしょう?

子供にはすごく新鮮、親世代は懐かしいと感じる

【柳川】ファンシー雑貨なら、サンリオの「フレッシュパンチ」という王道シリーズ。アニメは、「魔法の天使クリィミーマミ」(1983~84年放映)や「うる星やつら」(1981~86年放映)の色合いやデザインを参考にしました。

【原田】まさに僕世代の女子が小学生だった時のアニメ(笑)。小学校の時に、クラスの女子が「クリィミーマミ」やサンリオの「キキララ(リトルツインスターズ)」にはまっていたのを思い出すなあ。プリキュア世代の親世代は、僕と同じ現在40代の団塊ジュニア世代やポスト団塊ジュニア世代。団塊世代に次いで人口ボリュームの多い世代だから、親受けを狙うと視聴者・消費者としても一気に影響力が大きくなるね。

【柳川】ターゲットのお子さんにはすごく新鮮に映るし、親世代は懐かしいと感じる。ネット上の意見を見ていると、80年代っぽくて今どきじゃないという人もいれば、ちょっとズレてるからオシャレだねととらえる人もいたので、狙いは外れていなかったようです。

【原田】エンディングの歌もわれわれ世代としては懐かしい印象。

【柳川】はい。「昭和アイドル歌謡っぽく」とお願いしました。中森明菜、工藤静香、中原めいこ、セイントフォー……。そのあたりの曲をたくさん聴きながら企画を立てたんです。

【原田】僕が小学校4年生の時に初めて買ったCDは、工藤静香の『MUGO・ん…色っぽい』でした。まんまと君の戦略にやられちゃってるわ……。今の時代、子供の数が減っているから、「親子セットでマーケティングの対象にする」というのは、これまで以上に有効になっていますね。