「家族みんなで楽しめる」が重要なポイントに
【柳川】80'sはハリウッドでも今、定番になってきています。最近では『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017年)の敵が80年代ファッションに身を包んでいて、全編に80年代ディスコサウンドが流れていました。マーベル映画の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ(2014年、17年)では、カセットテープが出てきて、80年代の音楽が物語のポイントになっています。つまり両作とも、家族みんなで楽しめるように考えられているんですよ。「スタプリ」は、その仕掛けを「プリキュア」でやる、という実験でもありました。
【原田】アメリカは移民人口が多いから、そもそも子供や若者の数も多く、ファミリー層を狙えばそのまま王道のマーケティングになります。グローバルな市場を見ても、今、世界の市場は「アジアの世紀」。アジアの子供や若者が多い市場の人口が爆発し、世界の中心となり始めており、ハリウッドとしても「世界のファミリー層」に照準を定めるのが得策な時代になってきています。
日本の場合は、以前の団塊世代が父親だった頃のいわゆる「標準世帯」のボリュームも、子供・若者の数も純粋に減ってきているので、親子セットをターゲットにせざるを得ないという状況で、アメリカとは違います。アメリカも日本も理由は違えど、「家族みんなで楽しめる」が重要なポイントになってきているのは面白いですね。
マーケティング的には、お父さんを狙ったほうがいい
【原田】年間視聴率で5年連続の「三冠王」を達成した日テレも、同じ発想で番組を作っているように見えます。「世界の果てまでイッテQ!」や「ザ!鉄腕ダッシュ!!」はその象徴。今の日テレは全社を挙げてファミリー層を狙っている印象です。最も人口が多いのは高齢者層なんだけど、消費の中心はいつの時代も稼いでいる現役世代。そのほうがスポンサーもつきやすい。ただし高齢者層の増加や未婚・非婚化の影響により、現役世代のボリュームや社会的影響力は落ちているから、ファミリーとして束で狙う。
ただ「スタプリ」に関しては、個人的にお願いがありまして……。
【柳川】なんですか?
【原田】僕も、娘の「スタプリ」の話にもっと交じりたいんですよ。お父さんが娘と交われる仕組みをぜひ作ってほしい。
ファンシー雑貨も「クリィミーマミ」も、お母さんだったら自分の小さい時の体験からついていけるんですけど、お父さんは女児モノの原体験がないからなかなか難しい。
少し余談ですが、僕は「令和」の時代には、また男性消費が注目を浴びる時代に戻ると思ってるんです。平成の時代の、特に大都市部では、専業主婦の家庭が多く、その主婦が財務大臣として家計をコントロールしていたから、実際の消費における女性の影響力はすごく強かった。男が稼いで、女が使いみちを決める。つまり平成は女性消費の時代でした。
しかし、今後ますます共働きが増えていくと、夫婦の財布が別々になっていきます。すると、世界でも同じ傾向がありますが、日本は男性のほうが正社員率も賃金も高いので、娘が親に何かをねだってきた時、父親のほうがお金を出しやすい時代になるかもしれない。つまり、マーケティング的には、お父さんを狙ったほうがいい時代が来つつあるし、もっとそうなると僕は予測しています。