「フランス方式」を検討する意義はある

1000年にわたる男系継承を可能にしてきたフランス方式を、直ちに現在の皇室に当てはめることは困難かもしれません。文化や伝統の違いに加え、時代環境の差もあります。昔の后は現在ほど公務に追われることなく、出産に専念できましたし、フランス王室では、男子が産まれない王后と離縁し、再婚することもできました。いずれも、現在の日本の皇室にとって現実的ではありません。

それでも、今後の皇位継承を考えるうえで、フランス方式を検討してみる意義はあると思います。具体的には、戦後、皇籍離脱した旧皇族の皇籍復帰により、男系の皇位継承権者の範囲を広げるという措置になります。復活する宮家が2~3あれば十分かと思われます。「そもそも男系継承にこだわるべきではない」とする論者にとっては意味がないかもしれませんが、男系継承を維持するべきと考える人にとっては、最も妥当な措置であるのは言うまでもありません。

一方で、疑問の声もあります。臣籍降下(皇籍から離れ一般人となること)されたかつての宮家の人々はこれまで、われわれと同じように「俗人」として過ごしてきました。それにもかかわらず、ある日を境に皇族や皇位継承者になるということに、国民の理解が得られるのかどうか。ひとたび俗人となった人が皇族となって、崇敬されるのか。もし皇位継承者にふさわしくないような人物が含まれていたら、どうするのか――。こうした観点から、無理に男系継承にこだわることは天皇制をかえって危うくするという、女系継承容認の立場からの批判も根強くあります。

女系継承容認論を含め、どのような措置も百点満点とはいえず、またどのような制度改変にも困難や障害がつきまといます。であるならば、フランス方式も一つの選択肢として、より多くの国民の理解を得られる皇位継承制度を築くための議論を積み重ねていけばよいのではないでしょうか。

宇山 卓栄(うやま・たくえい)
著作家
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家。テレビ、ラジオ、雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。近著に『朝鮮属国史――中国が支配した2000年』(扶桑社新書)、『「民族」で読み解く世界史』、『「王室」で読み解く世界史』(以上、日本実業出版社)など、その他著書多数。
(写真=Roger-Viollet/アフロ)
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