なぜスタバだけが大きくNPSを下げたのか

調査の結果、前回に比べてスタバだけが大きくNPSを下げたことがわかりました。18年7月に調査した際はマイナス16%だったのが、今回マイナス31.7%まで落ちました。もちろん他の2社も多少の変動は見られましたが、8カ月でここまでNPSが落ちる例を、私は初めて見ました。その結果、8カ月前は3社でトップだったスタバは最下位に転落しました。

日本では多くの産業でマイナスに出る傾向にあります。外食店舗のNPSは平均でマイナス40前後です。スタバのNPSは産業平均よりは高いのですが、それでも意外な印象があります。

急落の要因はなんだったのか。私は「今年2月の値上げ」が影響しているとみています。

項目ごとの影響度合を示している「カスタマージャーニーマップ」を見ると、「コストパフォーマンス」の項目がNPSへの影響度が強いという結果が出ているのに、顧客から評価が極端に低くなっており、NPSの押し下げ要因になっていることがわかります。値上げが顧客の愛着度(ロイヤリティー)に悪影響を与えたことは明らかでしょう。

自由回答でも以下のように価格に対する不満の声が多くみられました。

「もともとコーヒーチェーンの中では高めの値段設定だったうえ、最近を値上げしたから、ややコストパフォーマンスについてはマイナスに感じた」
「食事するには高い。セットで買うとお得といった割引があればうれしい」
「特別なときじゃないと手をだしにくい金額だ」

強みだったホスピタリティーが「当たり前」になったか

項目ごとの数値をみると、「店内の雰囲気・居心地」、「ドリンク・食事の味」についても改善余地はあります。ただ、いずれも「今も悪くはないけど、もっとよくしてほしい」という声ととらえていいでしょう。

また「店員の感じの良さ」も、NPSに対する影響度は少ないものの、押し下げ要因になっています。インパクトとしては小さいのですが、スタバは従業員の会社や仕事に対する愛着度(eNPS)の向上に取り組んでいるとも言われています。あえて細かいマニュアルを設けず、自分たちで考えて接客をするという方針をとっています。

なぜ押し下げ要因になったのか。もしかすると、スタバ特有のホスピタリティーが、初上陸から20年以上が経過し、日本人にとって普通のものになり、目新しさや感動を与えづらくなっているのかもしれません。

なお、今回の回答者は価格に対する感応度が高いことが疑われます。今回の調査では回答者をクラウドソーシングサイト「ランサーズ」で募集しており、回答者の中で一番多かった年収帯は「200万円以下」と低めだからです。なお前回の昨年7月調査でも「ランサーズ」で回答者を募っています。属性の傾向は変わっておらず、スタバのNPSが急落した事実は間違いないと考えています。