研修の受講料は2700円。受講者の年齢は幅広く、60代のドライバーも多い。東京オリンピックが近づくにつれ、英語の必要性を感じるタクシー乗務員は増えており、研修の人気も高まっている。同じ講座を何度も受講して学ぶドライバーも多い。最も人気が高い中級のコースは、予約開始から30分程度で満席になることもあるという。このため、希望するタクシー事業者に講師を派遣して研修を行ったりもしている。

19年1月末までに、延べ1万3000人のタクシー乗務員が講習を受けているが、センターでは五輪開催までにこの人数を2万人にするという目標を掲げている。

研修を受けて羽田国際線へGO

研修受講で身に付けた英会話の力を「見える化」し、優遇する仕組みもある。羽田空港国際線ターミナルのタクシー乗り場には、外国人旅客接遇研修の修了者だけが付けられる「Hospitality Taxi」と書かれた表示板を掲出し、専用のレーンに入構することができる。東京都内で7万人以上いるタクシー乗務員のうち7000人以上、「今や約1割の乗務員が、この入構表示板を付けている」(伊藤さん)という。

外国人旅客接遇研修修了者が付けられる入構表示板(上)と、公認英会話ドライバーが貼れるステッカー(下)。

さらに17年からは、上級レベルを修了し、検定に合格すると、公認された英会話ドライバーであることを表す「ENGLISH CERTIFIED DRIVER」と書かれたステッカーをタクシーの車体に貼付する制度もできた。

検定試験は、外国人乗客を相手に英語で会話をするロールプレイング。乗車・降車時のやりとりだけでなく、乗客からの質問にどう対応するか、緊急時や突発事象への対応力も問われる。合格者は253人(19年2月末現在)おり、「東京オリンピックまでに500人を目指す」と伊藤さんは意気込む。

タクシー会社も乗務員の英語力アップに力を入れている。全国で約7400台のタクシーやハイヤーを抱える大手の日本交通では、外国人旅客接遇研修の受講を推進しているほか、新人研修でもタクシーの接客で使う英語を取り入れている。「ご乗車ありがとうございます」「◯円でございます」などの基本的な接客用語のほか、「カーナビで調べます」「午後10時から深夜料金です」などの、すぐに使えるフレーズを盛り込んでいる。

(撮影=石橋素幸)
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