1950年に全焼した「金閣寺」は国宝だったから国費で再建された

後者の『金閣寺』も、事実を基に描かれた小説である。1950年7月2日。その日は京都市民にとって悪夢となった。国宝鹿苑寺(ろくおんじ)の舎利殿(金閣)が、同寺に属する青年僧によって放火され、全焼したのだ。この衝撃的な事件は当時の知識人を刺激し、三島由紀夫や水上勉らが作品に取り上げるなどした。

三島は作品で、金閣の放火は、吃音などの生い立ちに悩まされた青年が、金閣という「美への嫉妬」を燃やし放火に至った、との解釈を示している。

金閣は当時、国宝の指定がなされていた。そのため再建には国の税金が投入されることになった。また、京都財界などをはじめ、全国からも寄附が集まり、金閣は火災から5年後には再建を果たしている。

金閣の場合、古い設計図を基にして正確に復元がなされた。しかしながら、「再建築」であることから、再建後は国宝の指定からは外れてしまった。ちなみに、同寺は世界遺産だが、金閣が単独で指定を受けているのではなく、鹿苑寺庭園全体としての登録である。

ノートルダム大聖堂の再建にマクロン大統領は国費と投入示唆

今回のノートルダム大聖堂の再建はどうなるのだろう。

ノートルダム大聖堂
※写真はイメージです(写真=iStock.com/eugenesergeev)

マクロン大統領はいち早く、「われわれはノートルダム大聖堂を再建する。それが国民の望むことだからだ」と表明し、国費の投入を示唆した。わが国の菅義偉官房長官も会見で「フランス政府から何らかの支援要請がある場合は、日本政府として積極的に検討したい」と述べた。

2017年8月29日付ロイター通信の報道によれば、ノートルダム大聖堂の所有は国であり、修繕のために毎年200万ユーロの予算を計上していたという。さらに、カトリック教会パリ教区は独自に慈善基金「ノートルダムの友」を設立し、1億ユーロの修復資金調達に乗り出したと伝えている。大聖堂は国の所有であるために国費で再建築をまかなうことが可能という解釈が成り立つ。

 

今回の火災は世界的ニュースにもなっているので、世界中のキリスト教信者や企業や個人から多額の寄附が集まることだろう。したがって、ノートルダム寺院の再建は比較的短時間のうちに、達成されるのではないかと、私は現時点では楽観視している。