柳井さんは日本を代表する経営者です。そして、私は柳井さんのように、自分の心の中と向き合っている人ほど激動の時代には強いと思います。

自分の仕事や会社にとって何が最善で、自分はどうしたいのか。それを常に考えているからです。

インターネット社会では、嫌でも大量の情報が入ってきます。新聞やテレビを見ない人でも、何げなく見たスマートフォンを通して最新のニュースは入るはずです。

日本だけでなく世界中の情報が自然と手に入る現代では、意識して自分と向き合うことが重要なのではないか。そんなことに気付かされました。

情報を入手することの価値が薄まっている

内向的な人の方が結果を出せるのではないか――。そのことについて考えるためには、「情報のフラット化」という社会の変化について知るところから始めないといけません。

情報があまりにも手に入りやすくなり、入手をすることの価値が希薄化されたのが「フラット化」という現象です。

2011年の東日本大震災のときに政権の中枢にいた政治家や官僚に取材をしたときのことです。震災当時は「Twitterをよく見ていた」と複数人が証言しました。

Twitterには、海外メディアや日本の報道や専門家の知見がうまくまとまっていました。また、重要な情報は自然と多くリツイートされるので目に留まります。

もちろん中にはデマもありました。ただデマと見抜いたうえでその情報に接することは「人々が何に不安を感じているのか」「どんな情報に飛びついてしまうのか」という国民心理を知る意味で重要な情報になります。

特に、当時首相補佐官だった寺田学氏の話が印象的でした。放射能影響予測ネットワークシステム「『SPEEDI』(スピーディ)」の存在を知ったのも「Twitterがきっかけだった」と振り返っていました。

日本の安全に関わる大事な情報の「今っぽい」入手経路に大変な驚きを覚えました。

極端な言い方をすると、首相補佐官という日本のトップレイヤーにいる人と、家で寝転がってスマホをいじっている高校生が同じ情報を目にすることができる時代だということです。

重大情報がすぐ手に入り、専門家に会いに行かなくてもスマホがあれば誰もが知識を手に入れられる「情報がフラット化」した社会。

そこでは、一人ひとりの心の「内面」が情報の最後のフロンティアになりました。個人の心の中にだけは、誰もコピペできない情報が詰まっているのです。