「専門学校卒業→即デビュー」ではない

それに専門学校を卒業したからといって、よほど「天分」の才能を持っていない限り、すぐに声優としてデビューできるわけではありません。声優科を持つ専門学校は2年制が多いようですが、多くは2年生になった頃、次のステップとしていよいよ声優事務所、その養成所へのオーディションが待ちうけることになります。

岩田光央『声優道‐死ぬまで「声」で食う極意』(中央公論新社)

さらに言えば、ここでどの養成所を受けるかで、声優としての人生に大きな差が生じます。

人気声優を抱えていない小さな事務所が持つ養成所の場合、多くは大手より早く、12月くらいからオーディションを始めます。これは大手事務所よりもなるべく早く、良い人材を囲い込む“青田買い”をしたいという狙いからのこと。そこで入所した人材には「特待生」という称号を付けることもあるようですが、一度社会に出てしまえば、その先、何の価値ももたらしてはくれないでしょう。

声優を目指す「王道」にかかるお金

ではそのような、ある意味で声優を目指す歩みの「王道」を進むには、いったいどのくらいのお金がかかるのでしょうか。

ざっとですが、専門学校は1年目に150万円、2年目に100万円ほどはかかります。そしてその後、養成所に入ればまたここでもお金がかかります。養成所のほとんどは1年制ですので、約60万円といったところでしょうか。ですが僕が講師を務める養成所は希望すれば無期限でいられますし、それぞれの養成所によって状況はさまざまです。

こう書くと、あまりにお金がかかることに驚き、声優を目指すこと自体、尻込みしてしまう人もいるかもしれません。しかし間違えて捉えてほしくはないのですが、資質や実力、そして「声優になりたい」という強い熱意が伴えば、実は専門学校に行かずとも、養成所に通わずとも、直接事務所に所属することは不可能ではありません。