映画館のスクリーンで音楽ライブなどを観る「ライブ・ビューイング」が増えている。企画がはじまった8年前に比べて、2017年の配給本数は約10倍だ。なぜ人気になったのか。国内唯一のライブ・ビューイング専門配給会社に聞いた――。

実際のライブより安くて、チケットが取りやすい

映画館のスクリーンで音楽ライブや演劇が観られる、ライブ・ビューイング(以下、LV)が増えている。

LVのように、映画館で上映される映画作品以外を非映画デジタルコンテンツといい、この市場は2017年には182億円に達した。映画館全体の興行収入の1割近くにのぼり、このままのペースでいけば2022年にはLVのみで約245億円まで成長すると見込まれている(GEM Partners調べ)。

LVは実際のライブに比べて安価で、人気公演でもチケットが取れる可能性が高い。例えば、2018年12月2日に行われた桑田佳祐のライブ「平成三十年度!第三回ひとり紅白歌合戦」のLVチケットは、3500円だった。定価9000円の公演チケットは発売から瞬時に売り切れたが、LVは前日まで購入でき、全国47都道府県109会場で多くのファンが楽しんだ。

福山雅治、B'z、AKB48、宝塚、2.5次元、プロ野球……

「ひとり紅白歌合戦」のLVを配給したのは、ライブ・ビューイング・ジャパン社(以下、LVJ)だ。国内唯一のLV専門配給会社として、現在は年間160本程度を配給している。

ライブ・ビューイング・ジャパン社HPより

LVJは、2010年にアミューズ内に準備室が発足し、ファミリーマート、WOWOW、博報堂キャスティング&エンタテインメント、エイベックス、ソニー・ミュージックエンタテインメント、東映、東宝、電通の出資を得、エンタメ業界全体のネットワークサービスを担う会社として、2011年6月に設立された。

取り扱う演目は、福山雅治やB'zなどの大物ミュージシャンからAKB48などのアイドル、K‐POPなどの音楽ライブ、宝塚歌劇、2.5次元舞台、クラシックバレエ、落語、アニメ・声優イベントなど多岐にわたる。

2018年7月には、プロ野球にも拡大。福岡ソフトバンクホークスのイベントゲーム「鷹の祭典」を、全国47都道府県48カ所の映画館で中継した。球界初の試みだったため、チケットの売れ行きが懸念されたが、フタを開けてみれば48カ所中25カ所で完売という好成績を残している。