「2004年頃に映画館のデジタル化が始まり、フィルム以外の上映ができるようになりました。2000年代は全国にシネコンが増え、スクリーン数が増えた時期でもあります」(LVJ・小谷代表)

日本国内でLVが一躍注目を集めたのは、2008年にティ・ジョイ系列の映画館5館に生中継されたL'Arc~en~Cielパリ公演だった。朝4時から新宿バルト9(東京都新宿区)の9スクリーンすべてを使って中継したところ、チケットが即完売となった。スクリーン数が増え続ける中で稼働率を上げるため、映画館側も早くから非映画デジタルコンテンツの上映に目をつけていたわけだ。

ライブも週末に集中するため取り合いに

ただし、今、LVの年間配給本数は頭打ちになりつつある。原因は、押さえられる会場数の限界だ。前述の通り、国内のスクリーン数は現在も増え続けているが、映画自体の配給本数も邦画を中心に増加傾向にある。

「映画の封切り日もライブイベントも週末に集中するため、スクリーンの取り合いになっています。弊社だけでも1日3本配給する日があるほどなので、映画館側との交渉は難航しがちです」

市場をさらに拡大するための余地があるとすれば平日だ。この部分の開拓はこれからだという。19時スタートの公演を仕事帰りに観に行くのは、帰りのことも考えると勤め人にはハードルが高い。一方で、平日昼間に時間があるのはシルバー層だが、この層が好む演歌歌手や落語家などは地方巡業やイベントをこまめに開催するため、生鑑賞が当たり前。そうなると、LVの需要は高くなさそうだ。

現状のお客は東京に集中している

もうひとつ残されている可能性としては、都市部以外の観客の掘り起こしがある。LVの顧客は「圧倒的に東京に集中しています」という。

「舞台やライブを観に行くコアなファンは、やはり都市部にいらっしゃいます。『なんとなく好きだけどライブに行くほどではない』というグレーゾーンの方々にもっと来てほしいのですが、まだそこまで開拓できていないのが実情ですね」

とはいえ、音楽コンサート市場は2018年上半期で前年同期比5%の伸びを見せ、ライブの重要性は増してきている。プロ野球も人気球団は平日でも球場を満員にしており、動員数は増加傾向にある。より画質の高い4KでのLV企画も始まっており、まだまだこの市場には可能性が眠っていそうだ。

伊藤 歩(いとう・あゆみ)
金融ジャーナリスト
1962年、神奈川県生まれ。複数のノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て現職。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『弁護士業界大研究』(産学社)など。
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