「ロボットを人間としてみる」と起きる大問題

人工知能とロボット工学の進歩によって、かつてSFの世界であったものも、次第に現実味を帯びるようになってきた。その一つは、人間をサポートするロボットだ。人間と会話したり、サービスを補助したり、あるいは、医療や福祉の分野で心理的なケアを担ったりするロボットは、すでに幾つかのものが実現している。

それらは総じてソーシャル・ロボットと呼ばれる。1999年にソニーが発売した犬型ロボットAIBOや、2014年にソフトバンクがリリースしたPepperは、その代表例だ。現時点での性能は初歩的だが、いずれは完全に自律的な人間のようなロボットも登場するのではないかと期待されている。

しかし、ロボットが人間的な性質を持つための条件は、ロボットだけにあるのではない。「人間がロボットをどう感じるか」も重要なポイントなのだ。

「RealDoll」の製造元(@AbyssCreations)がTwitterに投稿している製作の様子。

後述するように、ロボットの友人や恋人としての役割は、しばしば、私たちに感情的な依存を引き起こす。つまり、ロボットがこれらの役割を担うようになるにつれ、私たちは、ロボットを人間としてみる傾向が強くなることが分かっている。それは同時に、さまざまな軋轢も生むことになる。

ごく普通の人々のセクシャル・ヘルスのための市場

そこで今回は、「セックス・ロボット」について取り上げたい。人工知能やロボット開発の多くは公益に資することを目指しているが、プライベートな事柄、もっと言えば、性的な部分でも活用が進んでおり、これには激しい議論が巻き起こっているからだ。

以下では、セックス・ロボットの特徴に関する性的な記述やリンクが含まれることを、あらかじめ断っておく。それらを不快に思う読者は、読み進めないことをお勧めする。

セックス・ロボット開発の背景には、セックス・ドールないしはラブ・ドールとも呼ばれる人間型の人形を愛好する人びとの市場がある。ある報告では、この市場は、安価なノベルティ商品の製造から、高品質でリアルなラブ・ドールまでを含み、数百万ドル規模の世界的産業へと成長を遂げている。

公平を期すために言えば、この市場は、特殊な性的嗜好を持つ人びとのものというわけではなく、ごく普通の人々のセクシャル・ヘルスのための市場でもある。