アートの世界を見ても、本当に大成功している天才と言われる人たちは皆、ハイブリッド人材である。世の中には絵が得意な人は掃いて捨てるほどいるが、やはりピカソやモネを挙げるまでもなく、現代でも千住博氏などは別格である。彼らは絵描きであると同時に、思想家・哲学者でもあるからだ。

もちろん、自分の好きなことに没頭しながら生きやすくなる社会ではある。でももし何かの世界で圧倒的な成果を挙げたいなら、自分のアトリエを飛び出し、知識を貪欲に学び、その知識を統合することにしか成功はないだろう。

ビジネス書を乱読しても本質は身につかない

マスターは仕事軸、メンターはプライベート軸のつながりだ(図表=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

どんな仕事を選ぼうと、マスターやメンターを持つことは必要だ。

なぜならコミュニケーション作法や所作、考える枠組み、倫理基準などの仕事のスキルは「身体知」であり、言語化できるものではないからである(つまりビジネス書を乱読しても本質を身につけることは難しいということ)。

身体知を身につけるためには仕事のロールモデル(師匠)を見つけて、じっくり観察してモデリングすることが成長への最短距離である。

マスターとは職業軸のつながりのことで、メンターとはプライベートな軸のつながりのこと。前者はティーチングやコーチングをしてくれる「師匠」、後者は焼肉を奢ってくれながらメンタリングをしてくれるような「先輩」のことで、プライベートな軸のつながりを指す(図表2)。

マスターとメンターなきキャリアはまずないだろう。地方の工場で働いていようとニューヨークのゴールドマン・サックスで働いていようと、それは変わらない。

たとえばマネックスグループCEOの松本大氏のマスターはジョン・メリウェザー氏。世界中から天才を集めてきてLTCMというヘッジファンドを作った経験を持ち、今でも派手に活躍する伝説の投資家だ。そのメリウェザーが師匠として崇めているのが、世界最大の投資ファンド、クォンタムファンドを率いるジョージ・ソロス氏。