しかし今回の情報提供者が立ち上げたキャンペーンは開始から1週間以上が経過したにもかかわらず、署名の減算は観測できていない。またメールアドレスについても情報提供者の情報とプレジデント誌編集部による検証、三上氏の見解すべてと矛盾した回答であった。

この疑惑を持つ状況がサイト立ち上げ時から継続的に続いていたとしたら、今まで立ち上げられたキャンペーンと集まった署名すべてに対して、水増しや工作が行われた可能性を拭うことはできなくなる。それは賛同者の「行き過ぎた暴走」だけでなく、キャンペーンを立ち上げた者が、署名を通すことによって得られる利益のために水増しを行っていた可能性も、通常の対策が行われているサイトより高くなる。

前出の和奈さんは自らのキャンペーンが成功したことについて「5万人を超える、多くの方から署名をいただけて、大変嬉しく思っております」と発言しているが、Change.orgのずさんな仕様ではどれだけ署名を集めようと「5万人が署名した」のではなく、「署名ボタンが5万回押されたにすぎない」という見方もされかねない。

1人が5万回も署名ボタンを押すのは途方に暮れる作業のようにも感じられるが、ある程度のITツールの知識さえあれば、スマホやパソコンに投票までの動作を学習させ、簡単に自動でくり返し投票させることができるのだ。

もちろん、署名には法的拘束力はなく、あくまでもこれだけの人が賛同したという参考にしかならないものだ。しかし署名を受け取った側がこの仕様を知れば、工作の可能性が通常より高まる手段によって集められた署名に対してアクションを起こす可能性は下がるだろう。それは、サイトの可能性を自ら狭めることにほかならない。

現在、永田夏来さんという方が、麻薬取締法違反容疑で「電気グルーヴ」のピエール瀧容疑者が逮捕されたことをめぐり、「電気グルーヴの音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止を撤回してください」と、サイトで呼びかけている。和奈さんのキャンペーンもそうだが、こんな素晴らしい署名活動の信ぴょう性がサイトによって無に帰してしまったとすれば、残念だ。

※編集部注:プレジデント本誌の報道を受け、Change.orgは3月24日、「2019年3月25日(月)発売のPRESIDENT 2019年4.15号にて、Change.org上の署名数の信憑性について検証する記事が掲載されました」「記事内で言及されているキャンペーンも含めて、これまでChange.orgで行われているキャンペーンの賛同者数は、同一人物からの大量の複数の賛同や、プログラムを用いた大幅な水増しは排除されています」と同サイトにて発表した。本誌編集部は発表前日の23日に当該キャンペーンに賛同者が2000人以上いたことを確認したが、発表後に賛同者が減ったことも確めた。

(写真=iStock.com)
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