署名サイトという公的な性質を持つのであれば、メールアドレスの2段階認証やIPアドレスの監視は実装されていて当然の機能だろう。そのため、情報提供者の話は単なる狂言に思えたが、「冷やし中華を冬に頼んだ人間を現行犯逮捕できる社会の実現へ」は特に話題になることもなく、19年3月15日には2000人の賛同者を集めていた。
このことから、情報提供者の話には一定の信ぴょう性があると考えられた。真偽を確認するため、プレジデント誌編集部もChange.orgにて「a@a.com」という存在しないメールアドレスに、存在しない11桁の郵便番号を入力して登録をしてみたが、署名はカウントされてしまった。また、同一のIPアドレスにて連続で署名を行ってもカウントは正常に行われ、署名が減算されるようなこともなかった。
この件について、ネット上の諸問題に詳しいITジャーナリストの三上洋氏に見解と意見を求めた。
「私も架空のメールアドレスと同一のIPアドレスで署名が有効になったことを確認できました。同サイトのプライバシーポリシーにはIPアドレスによる監視をしていると書かれていますが、機能はしていないと思われます」
また、不正投票に対する技術的な問題についてはこう触れた。
「メールアドレスの認証とIPアドレスの監視は技術的に難しいことではなく、大きなコストはかかりません。投票数が減ると商業的、社会的価値が下がるため、サイトが意図的に水増し投票を放置している可能性があります。投票後、他のキャンペーンへの投票を勧めてくる点からもサイト全体の投票数を増やそうとする傾向を感じました」
三上氏はChange.orgについて「サイト自体の理念、取り組みは素晴らしいもので、私も賛同します。しかしシステム自体は水増し投票を非常にしやすい環境であると言わざるをえません」と総評した。
これらの疑惑について、プレジデント誌編集部はChange.orgに対して質問状を送った。すると、同サイトの「Carlos」という人物から次のような返答がきた。
「システムが同IPアドレスから、同一のキャンペーンに対して多すぎる署名を検出した際、これらの署名は完了せず、削除されます。
Eメールアドレスの登録に関するご質問に関しまして、サイトでメールを登録される度に、リンク付きの確認メールを送らせていただいております。確認メール内のリンクがクリックされなかった場合は、アカウントは作成されず、そちらの署名はカウントされません。何らかの署名が誤って通過した場合は、その後削除されます」