安倍晋三首相が、党内の一部で浮上する「自民党総裁連続4選論」をかたくなに否定している。3月20日には「正真正銘、3期目が最後の任期になる」とも述べた。しかし、この発言も当面の政治情勢を計算しつくしたもの。この発言で「4選」が消えたと受け止めるのは早計だ。安倍氏が「総裁4選=2024年まで首相」を強く否定する背景とは――。
「連続3期までが党の明確なルール」というが……
安倍氏の発言は3月20日午後、東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた日本商工会議所(日商)でのスピーチで飛び出した。日商の三村明夫会頭が最近、3期目を目指す考えを表明したことに触れて、「さすがに4期目は考えていないと思うが、私も全く同じ心境だ」と語った。「連続3期までが党の明確なルールなので正真正銘、3期目が最後の任期になる」とも述べた。
背後で聞いていた三村会頭も含め、聴衆たちの間で笑いが漏れるユーモアに満ちたスピーチだったが「正真正銘」という言葉からは、党内外で流布されている4選論を沈静化させようという意思が感じ取れた。
「4選論」を打ち上げたのは、「3選論」の仕掛け人だった
この4選論は、政界の仕掛け人でもある二階俊博党幹事長が12日の記者会見で「今の活躍からすれば十分あり得る」とアドバルーンを上げたことで、にわかに注目され始めた。二階氏は、2016年夏、当時は「連続2期」までしか認められていなかった総裁任期の延長を提案し「3選容認」の流れをつくった。
二階氏の働きがなければ、いまの首相は安倍氏ではなかったかもしれない。このあたりの経緯については「"80歳の古だぬき"二階氏が権力もつ理由」をご参照いただきたい。
その二階氏の発言だけに政界も注目しないわけがない。賛否両論が出た。安倍氏を支持する議員からは「二階氏の提案が一考に値する」という反応があった。一方、自ら次の総裁選出馬を目指す議員からは「国会議員が『4選のために頑張る』といっても有権者が支持するかどうかわからない」(石破茂元幹事長)、「この時期には適当な発言ではなかった」(野田聖子前総務相)と疑問の声があがった。