6段階のプロセスでフィードバックを円滑に

 「自分の任務を正確に果たせば、十分かつ継続的なコミュニケーションが生まれ、社員は自分が何を期待されているか、自分の仕事が優秀か否かをよく理解するようになる」と、ジャック・H・グロスマンとJ・ロバート・パーキンソンは共著(文末参照)に書いている。2人は円滑なフィードバックのための6つのステップを勧めている。

(1)部下の成功と失敗を明確にする

遅刻が多すぎると注意する代わりに、ある一定期間にその社員が遅刻した回数を正確に伝えよう。

高評価を与えるときも同様に、部下が会社に貢献した金額や時間などを具体的に示そう。

実際に、管理職が犯す最大のミスの1つは、高評価の社員にフィードバックすることの重要性を見過ごすことである。認められていないと感じて喜ぶ者はいない。ロバート・ハーフ・インターナショナル社(カリフォルニア州)による1998年の調査によれば、評価されなかったことが原因で、有能でありながら離職した社員が4人に1人いた。優秀な社員に多少のフィードバックすら与えなければ、その者は才能をほかの場所で生かそうとするのだ。

問題ある社員にフィードバックする際には、さらに高いスキルと気配りが必要になる。管理職は、事実に基づくフィードバックと感情的なフィードバックとの区別に留意すべきだ。言葉であれ態度であれ、部下に対して怒りや失望を表現しても、逆効果である。

要するに、感情を表に出さずに、問題である行為を具体的に話し合うことに専念する。そして言葉だけでないことを忘れてはならない。ボディーランゲージ、表情、声のトーンなども含まれる。

 「たとえ、事実に基づいたフィードバックを送っているつもりでも、言葉以外の表現が激怒を示していれば、部下は保身か敵対心を持って反応するものだ」と、ロバート・ベイカルは著書(文末参照)の中で述べている。

(2)話をやめて聞き手に回る

自分の意見に対して部下の返答を求め、その言葉やボディーランゲージにも気を配ろう。必要ならば質問で補いつつ、十分に主張できる機会を部下に与えよう。部下の発言に耳を傾けない上司の忠告には部下も従わないだろう。

(3)態度を改める場合と改めない場合、それぞれが持つ意味を明確にする

問題行動に対処する場合には、明確な言葉で、その行動を改めない場合に起こりうる結果について伝えよう。たとえば、決められた日まで執行猶予期間の対象となる、次の昇給が見送られる、降格処分になる、などの可能性である。同様に、優良社員には、会社がボーナスや表彰を考えているならば、それを知らせよう。

特に問題のある社員には、彼らの行動が招く組織内の影響を理解させるために、特別に時間をかけることだ。たとえば、その社員が顧客の問い合わせに迅速に返答しないならば、その行動が顧客満足度に影響を及ぼしていると説明する。そうした情報を携えていれば、社員はフィードバックを独断的、懲罰的だと感じなくなるだろう。