「自分に似た人」を雇うと失敗する

「経営者としての真の資質とは、複雑性と専門性をパフォーマンスに変えること」と、ジョーン・マグレタは新著『What Management Is』に書いている。「人を使って仕事をしなければならない必要があればあるほど、自分自身を十分に理解しなければならない」。とはいえ、採用のプロセスでは人物を見るか、あるいはスキルを重視するかを問わず、採用者は自分自身ではなく、志望者を見る。実はこれは適切とは言えない。マグレタの提言にあるように、人事(採用担当)マネジャーの自己認識が高いほど、新規採用者のパフォーマンスは向上するからである。

有能な人事マネジャーは、自分の長所と短所、そして最も得意とする仕事を心得ている。そして就職志望者や新規採用者に率直にそれを伝える。他社と戦略的提携関係を結ぼうとする企業と同じように、このようなマネジャーは、自分たちのチームの総合的な目的達成能力の増大に役立つ強みを持った「パートナー」を選ぶ。すなわち、多くの場合、マネジャーは、自分とは気質や考え方が大きく異なる志望者を採用することとなる。しかし、そうするときにも、自分とは正反対の人であっても協力して仕事ができるよう、基本原則づくりに配慮を忘れない。

一方で「似たもの好き」で、自分のコピーのようなタイプの志望者を採用するマネジャーは、自ら失敗の罠にはまるだけである。学歴、民族的・人種的バックグラウンド、社会経済的地位、業界の展望など、自分と同じような人物であれば確かに気楽だし、優先的に採用するといった傾向があることは、十分に実証されている。しかし、熟練した専門技能、広い視野、広範囲にわたる経験に加え、強力な洞察力と深い感受性、これらすべてを備えることが企業に求められるような経済環境においては、このような傾向は、致命的にもなりうるだろう。

「正確に自己評価をできる人」、すなわち、自分の長所と短所をしっかりと自覚している人は、より高い成果を出す能力が備わっている場合が多い、と研究者のダイアン・ニルセンとデビッド・P・キャンベルは、1993年の論文に記している。しかし、時間と経験と自省は必要な自己認識を深めるうえで、絶対確実な教師というわけではない。何層にも重なる自己欺瞞を取り除いていくには、多くの場合他人の助けが必要である。人材を引きつけ、開発する能力を含めたマネジャーの対人関係スキルについては、マネジャー本人よりも「見識あるオブザーバーのほうが正確で妥当な評価ができる」とニルセンとキャンベルは続けて指摘している。

自分の不十分な点を認めることは「専門技能に関してのほうが容易」と指摘するのは、ニュージャージー州ウェスト・コードウェルに拠点をおく大手OA機器メーカー、リコーのビジネス開発担当副社長キャロル・デーリーである。「たとえば、自分がウェブブラウザについてまったくわからないのであれば、その知識がある者を雇えばよい。しかし、コミュニケーションやネットワーキングなど、もっと無形のスキルとなると、自分の足りない点を認めることはなかなか難しい。だが重要なのは、エゴを捨て、自分だけがチームのヒーローではないことを認識することだ」。デーリーは、毎年従業員が直属の上司、またその上役の評価を行っていたIBMで、自分の弱点についてフィードバックを直接受ける不快感を克服することを学んでいた。