売り上げが伸びないからといって、無理に新規顧客を開拓しようとしていないか。不況で痛手を受けたからといって、不況に強い事業を強化しようとしていないか。先行き不透明な時代、経営者はこうした行動に走りがちだが……。

景気回復がいつになるか。こればかりはわからない。だが、企業が採るべき戦略、より正確に言えば、採ってはならない戦略は、はっきりしている。今のような不透明な時期に「避けるべき5つの失策」として専門家たちの意見をまとめ、向こう1年で結果を出すための戦略的アドバイスを加えた。

愚行その1
短期的な市場の反応を恐れるあまり、
企業体質を長期的に強化する決定を遅らせる。

「投資家は四半期決算が黒字であってほしいとは思っているが、企業の長期的な体質強化を損なってまでも黒字になってほしいとは思っていない」と、アセットマネジメント会社SEIインベストメントのナンシー・キメルマンは指摘する。新規採用、在庫水準、借り入れ増など、投資家にわかる企業の決定は、結果論で批判されるのを覚悟しなければならない。

「不必要に人員や在庫や債務の水準を増やしたくはないが、最悪なのは、投資家の現在の反応を心配するあまり、今なすべきことに背を向けてしまうことだ。短期的には投資家やアナリストに歓迎されないかもしれない決定を下すことに尻込みしてはならない。だが、そういった決定の意義を説明できなければならない。マネジャーが給料をもらっているのは、顧客のために商品・サービスを強化し、業界で優位な立場を獲得できるような決断をするためだ」とキメルマンは言う。

「今はファンダメンタルズに回帰するときだ。目先四半期よりも、さらに先の将来に照準を合わせる企業が成功するだろう」