愚行その2
回復への準備は、
常に慎重で緩やかでなければならないと思い込む。

不況の底が浅ければ、回復の程度も浅いというこれまでの通念は、今回のリセッションにはまったく通用しないと語るのは、シカゴにあるグリフィン・クービク・スティーブンス・アンド・トンプソン投資銀行のチーフ・エコノミスト、ブライアン・ウエズバリーだ。景気には、基本的に長期のトレンドと短期的トレンドがつきものだ。

「今回のリセッションは、高度成長期における循環的後退なのだ。こうした状況では、我々が見てきたように、循環的後退はさほどひどくはないし、循環的上昇に転じると景気はロケットのように一直線に上向く。だから、景気回復の程度を過小評価する企業経営者は失敗するし、あえてリスクを取る経営者は今後、利益を得る」

回復期に先手を打つ2つの方法は、新入社員を採用し、ライバル企業の顧客を掴むことだ。リセッションの後には、「トップ企業は、峠を越えた病人と同じような考え方をするものだ。『生きてゆけることがわかった以上、生活の質を見直そう』とね」と話すのは、『The Change Monster』の著者で、ボストン・コンサルティング・グループ・アトランタオフィスの上級副社長を務めるジニー・ダニエル・ダックだ。これは、優れた人材を確保しつつ、外に目を配ろうという意味である。

愚行その3
リセッションに強い事業に移行して企業の防衛を図る。

コア機能を拡大し、強化する成長戦略や買収戦略が必要だとダックは忠告している。

「リセッション後の当然の課題は、『次のリセッションに痛手を少なくするにはどうすればよいか』である。リセッションに強い事業、つまり不況のさなかにも好調をキープできるような事業は、すべての経営者の夢であり、追求する価値があるが、常に実現できるとは限らない。一方で、自社の長所を知り、さらに重要なのは、コア機能を拡大して、フレキシブルな体質を築くことである」。

製品販売への依存度が高い企業は、関連サービス事業の展開を考えるべきだ。「たとえば、工業製品の製造企業は、保守サポートや遠隔モニタリング、業務の完全なアウトソーシングを提供して、顧客の稼働効率を改善することができよう」と、マーサー・マネジメント・コンサルティング副社長のエイドリアン・J・スライワツキーとリチャード・ワイズは最近の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に書いている。

自動車部品製造のジョンソン・コントロールズ社は、こうしたチャンスを生かして、「単に高品質の自動車部品を製造する会社から自動車メーカーの高度なニーズに対応できる会社に脱皮した」とスライワツキーとワイズは書いている。「今日、ジョンソン社は、1台当たり収益が上昇したのみならず、特注デザイン、顧客調査、製品テスト、および供給管理などを提供してより大きなマージンを得ている」。