昨今、流行のフラットな組織は、指揮系統が曖昧で、社内の摩擦を増やしている。また、増加の一途を辿る合併や提携で、組織内の人間関係を複雑にしている。そんな中でも対立を避けつつ、言うべきことは言わなければ仕事は進まない。
「平らな組織」は争いの種を増す
今日の職場は、緊張感に満ちている。景気の低迷期に競争に勝ち続けろというプレッシャーが厳しいと、ストレスが高まり、働く人々は神経をすり減らす。また、これ以外にも、今日のビジネス風土の構造そのものに、驚くほど多くの摩擦要因が潜んでいる。
階層を減らした、より水平な組織が導入されるようになったこともその1つだ。単に命令に従っていればよい人々よりも決定を下す立場の社員が増えたため、社内に新たな摩擦が生じる機会が増えているのだ。合弁や提携も、社員にとっては新たな人間関係の摩擦の種である。
人間関係の悩みは増す一方で、社内の相互依存の度合いも増えている。単独で仕事をすることはいまやほとんど不可能で、様々な人々から情報と協力を得なくては、仕事を完遂することができない。交渉の専門家であるサイ・ランドーが同業の妻子とともに著した『From Conflict to Creativity』には、「多種多様な人々や部署が相互依存を余儀なくされれば、摩擦の発生は避けられない」とある。
こうしたビジネス環境の下で、論争をうまく処理するだけではなく、それを創造的協力の機会として活用することはできないだろうか。
「我々の多くは、摩擦が起これば居心地が悪いし、摩擦を処理するだけの幅広い戦略もスキルも持ち合わせていない。我々は、マンモスを追いかけていた祖先から、紛争には闘うか退散するかの対応を遺伝的に受け継いでいる」とランドー一家は書いている。だが職場では、攻撃的になったり退散したりすることは、戦略として有効でもなければ適切でもない。