いまだ多くの会社では、給料の話題には「触れてはいけない」雰囲気がある。しかし、給料がどうやって決まっているかを社員にきちんと伝えている会社では、そうでない会社よりも社員の生産性と忠誠心が高くなることが明らかになった。
給料の話は社内最後の「聖域」
職場でのオープンな話し合いや透明性の価値を疑う企業は、いまやほとんどないだろうが、多くの企業にとって、トップシークレットのままの重要事項がある。それは給与だ。それがいくらであり、どうやって決定されるかという問題は、だれもが考えているが、口にすることはまずない。
「それは口にすべきことではないと考えられている。米国は世界で最もオープンな社会だが、この1点だけはオープンでない」と指摘するのは、シブソン・コンサルティング/シーガル・カンパニーの上級副社長のピーター・ルブラン。「企業が給与の話題に触れず、社員も答えを求めようとしないのは、それが禁断の話題だからだ」。
だが、ルブランが共同で行った新しい調査は、給与について十分に話し合えれば、社員の給与に対する満足感が増すばかりか、それによって組織への忠誠心、経営陣への信頼が高まるうえ、他にもメリットが多いことを示している。つまり、企業は、コストをかけずに、こうした見返りを得ることができるのである。
人的資源の専門家協会であるワールド・アット・ワークは、アメリカとカナダの26企業、6000人に及ぶ管理職と一般社員を対象に給与についての意識調査を行った。調査対象企業のほとんどが、給与を公開していなかった。しかし、給与について詳しく知れば知るほど、より多くの社員が給与に満足感を覚えるようになるばかりか、勤務態度も熱心になっていることがわかった。勤続年数が長くなり企業への忠誠心が高まるうえ、友人や家族に会社の話をすることにも積極的になる、といったように。これは有意義な指摘である。給与を引き上げるよりも、給与体系を改善し、それについて話し合うほうが、コストがかからないからだ。