【丹羽】いくら独裁の共産党といっても、国民の要望をむげに「NO」と退けるわけにはいきません。ただし、私は10年6月から12年12月まで中国大使を務めた経験から言って、14億の民をアメリカや日本のようなデモクラシーで統治することは、非常に難しいです。

【アタリ】しかしインドには中国に迫る人口がいますが、民主主義ですよ。

【丹羽】いや、インドは民主主義とはいってもカースト制度があるので、別の難しさがあります。私は、中国は連合会社みたいな形態に切り替えていく必要があると思っています。つまり、14億人を6つの地域に分割し、United States of Chinaつまり「中国合衆国」にして、間接民主主義を取り入れていく。それ以外に生存の道はないだろうと思います。

中国軍が増強する、30年後の東シナ海

【アタリ】中国には、皇帝が国を治めてきた3000年の歴史があるというのは嘘で、分断の時期が長かったり、小さな王国同士の内戦がたくさん起こっていました。全土が統一されていた時期のほうが、実にレアだったと言っていいでしょうね。

【丹羽】おっしゃるように中国の歴史では、秦の始皇帝で初めて統一国家が成立しました。そのあとも「夷狄」と呼ぶ異民族が外部から次々と侵入し、混血社会が続きました。中華民国時代に「五族共和」というスローガンを掲げていたように、漢民族は今では中国の人口の92%を占めると言われますが、当時はそれほど大多数ではなかったわけです。

【アタリ】脆弱な内面があると同時に、中国は世界規模の大国になろうとした過去がありません。植民地を持とうとしたこともなければ、他国を支配しようとしたこともない。そしてまた、普遍的な文化を持とうとしたことすらないわけです。普遍的な大国にならずして、世界の超大国になることはできません。

つまり中国は、アメリカに取って代わるような超大国になる資質を持っているとは思えないのです。また、自らも希望しないと思います。貧富の格差や環境問題など、国内にあまりにも多くの問題が山積しているからです。

【丹羽】そのお考えに、私も賛成です。中国がアメリカに取って代わるためには、世界的な信用や信頼が足りません。インターナショナル・バリューというものを、中国はこれから学ばなければいけません。しかし信用や信頼というのは、一朝一夕に培えるものではありません。