さらに強調しておきたいのは、医療は人助けである一方で、商売でもあるという事実です。医療関係者が儲けようとしたら、ただ病人が来るのを待つよりも、何かしらの「病気」を見つけだし、患者のほうから病院に来てもらったほうがいい。その典型が高血圧です。

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私が医学生だったころ(もう40年以上前ですが)は、「血圧は年齢に90を足した数より低ければ正常」と教わりました。60歳であれば150以下なら正常とされていたのです。しかし1993年にWHOと国際高血圧学会が新しい分類法を発表。最高血圧は140未満、最低血圧は90未満と変更されました。しかしこれは「どちらかが基準値を超えたら境界性高血圧なので、生活に気をつけましょう」ということにすぎませんでした。しかし日本の医療界はこれを異常値として、治療の対象にしたのです。本来、年をとれば血圧が高くなるのは当たり前の現象です。年齢を考慮せず全世代に共通の基準値を設けて「これ以上は高血圧」と線を引くようになったのは、高血圧患者をつくりだし、降圧剤を服用させるためにほかなりません。

結局、人間は50歳を過ぎれば、いろいろな病気が出てきます。その原因の85%は「老化」なのです。しかしそれを言ってしまうと医者は商売にならないので、「生活習慣がよくないせいで病気になった」ということにしているだけ。

また、年に1度の健康診断が義務付けられている国は日本だけです。中年が健診を受ければ必ず何かしら引っかかりますから、糸をたらせば魚が釣れる「釣り堀」のようなもの。「悪い病気ではないか」と強いストレスを抱えたり、生きた組織を取り出して検査する「生検」などで、かえって体にダメージを負うことのほうが多いのではないでしょうか。

結局、私は老化に逆らわないのが一番いいと考えます。基本はバランスのいい食事と適度な運動。これに尽きます。

富家 孝(ふけ・たかし)
東京慈恵会医科大卒。開業医、病院経営、早稲田大講師、日本女子体育大助教授などを経て、医療コンサルタントに。新日本プロレス・リングドクター。著書に『不要なクスリ 無用な手術』など多数。
 
(構成=長山清子 撮影=大杉和広 写真=iStock.com)
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