冒頭では子供向けの健全な内容だと見せかけ、途中で殺人や暴力といった描写に切り替わる「残虐動画」が問題になっている。手口は悪質で、子供にショックを与えることが目的だとみられる。情報社会学者の塚越健司氏は「現状では完璧な対策は存在しない。注意が必要だ」と警鐘を鳴らす――。

動画がいつの間にか「過激」になる

※写真はイメージです(写真=iStock.com/YiorgosGR)

幼い子供のいる家庭では、子供にスマホやタブレットを渡して、自由にYouTubeをみせることもあるだろう。そこで子供向けの動画を見せていたつもりが、いつの間にかキャラクターを生き埋めにするシーン、殺人などの残虐なシーン、排泄に執拗にこだわるシーンなど、内容が過度に刺激的なものに変わっており、子供がショックを受けるケースが報告されている。

こうした動画は、最初はいたって健全なもののようにみえる工夫がされているため、YouTubeもその過激さを見抜くことが難しい。こうした動画たちは、まとめて「エルサゲート(Elsagate)」と呼ばれている。

エルサゲートは、日本では2018年から聞かれるようになった言葉だが、英語圏では少なくとも2017年には話題にされてきたものだ。語源はディズニー映画『アナと雪の女王』の「エルサ」と、スキャンダルを意味する「ゲート」が合わさったものだと言われている。

「アンパンマン」を用いた動画もある

告発を始めたのは主に英米圏のユーザーで、次第に日本でも日本語で作成されたエルサゲートが多数確認されるようになった。内容は多岐にわたり、アニメだけでなく実写作品も確認されている。キャラクターが盗用されているケースもあり、ディズニーやマーベルなど英米圏で人気のキャラクターのほか、アンパンマンやしまじろうなど、日本人に人気の高いキャラクターが登場する動画もある。