目的は「金銭」だけなのか

気になるのはエルサゲート製作の動機だが、残念ながら決定的な証拠は今のところ存在していない。だが、考えられる点は大きく分けて2つある。

第1に、金銭目的だ。周知の通りYouTubeなどの動画サイトは、再生回数等に応じて報酬が支払われる。有名なキャラクターを使えば、世界中からアクセスが見込めるだろう。

例えばベトナムでは、3000万以上の再生数を叩き出した70ほどのエルサゲートがアップされ、投稿者が罰金を科されるという事件があった。削除等のリスクがあっても、ここまで再生されるとなれば、それなりに収入を得られるかもしれない。実際、有名なエルサゲートには、1つの動画で1000万回を超える再生数を叩き出したものもある(もちろん、違反報告などが多く寄せられることでYouTube側が問題を認識し、削除される)。

しかしそれでも疑問なのは、エルサゲートの中には、それなりに手の込んだものもあるということだ。実写やクレイアニメは製作には時間がかかるが、削除や、場合によっては摘発されるリスクを込みで、なぜそのような動画を製作するのだろうか。経済合理性が本当にあるのかは疑問だ。

裕福な人物の「いたずら」という可能性

エルサゲート製作の第2の理由として考えられるのは、「いたずら」である。

それなりに手の込んだ動画を製作して世界中に拡散するとは実に悪趣味だが、裕福な人物が世界中で仕事を依頼している、などの理由が考えられる。実際、海外の掲示板では、仕事でエルサゲートと知らずに動画の製作現場に携わったが、怪しさを感じてすぐにやめた、といった投稿もある。もちろん真意の程は定かではなく、当該掲示板はその性質上、創作とも考えられるが、ひとつの可能性ではある。

だがこの理由は、それこそ「陰謀論」になりかねない発想であり、現実的ではないようにも思われる。そのように考えれば、消去法的に金銭目的案が有力ということになろう。それも、誰か一人(ないしひとつの会社)が製作しているというよりは、世界中の多くの人々が、それぞれ独自に製作しているのではないかと推察される。日本のキャラクターを用いたエルサゲートなどは、少なくとも日本語や日本文化に親しい人物(達)が製作していると考えるのが妥当だろう。