問いかけて、すっと引く

酔っ払いをいなすには、問いかけが効果的だ。

「お父さん、どこで飲んだの?」

問われると無意識に答えようとするのが人間心理で、

「新宿……」
「いい店があるの?」
「あるよ」

こんな調子で会話し、スッと引くのがコツ。家族連れの場合は、特にこのときの笑顔が大事で、子どもの目には“余裕のパパ”に見える。恐怖心はどこかへ飛んでしまい、頼もしく思うことだろう。

もし、粗暴な酔っ払いであれば、家族をガードしておいて、手近な男性に「駅員さんを呼んでください!」と大声で言う。視線を据えて頼むのがポイントで、「誰か!」と不特定多数に呼びかけたのでは動かない場合がある。自分を見つめて「呼んでください!」と言われれば、義務感が生じる。声を張り上げるのも、お父さんの勇気なのだ。

私はホームをさっと見渡し、酔っ払いや、行儀の悪い若者グループがいたら避ける。離れた位置で電車を待ち、彼らと同じ車両には絶対に乗らない。乗った車両に“危険人物”がいたら、次の駅でさっさと車両を変える。家族を連れたお父さんであれば、最低限、留意すべきことである。

向谷 匡史(むかいだに・ただし)
作家、日本空手道「昇空館」館長
1950年、広島県呉市出身。拓殖大学卒業後、週刊誌記者などを経て作家に。浄土真宗本願寺派僧侶。保護司、日本空手道「昇空館」館長として、青少年の育成にあたる。著書に『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』(左右社)、『浄土真宗ではなぜ「清めの塩」を出さないのか』(青春出版社)、『親鸞の言葉 明日を生きる勇気』(河出書房新社)、『角栄と進次郎 人たらしの遺伝子』(徳間書店)など多数。