どうすればわが子の尊敬を得られるのか。空手道場を主宰し、僧侶、保護司としても活動する作家の向谷匡史氏は、「自分の得意分野で『お父さん、すごい』を見せればよい。得意なことが何もないというなら、歴史の話がイチオシだ」という――。

※本稿は、向谷匡史『最強の「お父さん道」』(新泉社)の一部を抜粋・再編集したものです。

わが子の尊敬を得られる方法は2つ。「できる」と「知っている」だ――。(※写真はイメージです。写真=iStock.com/RichVintage)

「言うことをきかない」と嘆く前に

お父さんに対する尊敬の念があるかどうか、しつけも子育てもこれが大前提になる。尊敬という言葉の意味は子どもには明確にはわからないだろうが、「ボクのパパはすごい!」という思いがなければ、お父さんの言うことに素直に耳を貸さない。これは年齢や性別、世代を問わず、普遍の人間関係術であることは、お父さん方は百も承知だろう。

「うちの子は言うことをきかない」と嘆いたり怒ったりする前に、「自分は子どもに尊敬されているだろうか」ということをまず、我が身に問うべきである。極論すれば、お父さんに対する尊敬を抜きにして、しつけも子育ても成立しないのだ。

では、どうすればわが子の尊敬を得られるか。方法は2つ。「できる」と「知っている」だ。

子どもたちは好奇心が旺盛で、見るもの聞くものすべてに興味を示す。「なぜ」「どうして」「どうやればできるのか」という意識で常に物事を見ていることから、私は「訊く坊」「訊く子」と呼んでいるが、言い換えれば、「なぜ」「どうして」「どうやれば」に答えてやれば、「パパ、すごい!」と目を輝かせることになるのだ。

私が道場で指導するとき、幼児や低学年ではできないことをわざと実演して見せる。

「いいかい、試合で攻めるときはスピードと正確さが大事なんだ。たとえば、こう構えていて……」

解説をしながら、子どもたちの前で連続技を瞬時に繰り出して見せれば、

「早い!」
「すごい!」

と感嘆する。

実際はすごくもなんともない。幼い子たちの目からすれば「すごい」になるだけで、中・高生あたりが見れば「館長も歳だな」といったレベルだが、子どもたちは私のことを「できる」と認識する。パンチングミットを激しく叩いて見せて、「できる」のデモンストレーションをやることもある。

「このとき注意することは、しっかり脇を締めることで……」

解説はするが、子どもたちに理解させようとは思っていない。

「館長、すごい!」

と認識させるのが目的であるからだ。この時点で子どもたちは私の掌中となり、指導はより容易になる。