電波情報という直接証拠を公開せよ

このように、火器管制レーダーを受けたことを直接示す証拠ではなく、火器管制レーダーを受けたであろうことを推認させる証拠を間接証拠、状況証拠という。他方、火器管制レーダーを受けたことを直接示す証拠を直接証拠というが、それは電波情報そのものだ。

海上自衛隊機がキャッチした電波情報そのものを公開すれば、その電波特性によって、それが火器管制レーダーなのか、その他のレーダーなのかが即座に確定する。韓国側も、日本に対して電波情報を出せと言い出している。

ところが日本側は、電波情報そのものを開示することは軍事機密上問題だとして、開示に消極的だ。電波情報を開示してしまうと、韓国軍が発したその電波を日本の自衛隊がどのように収集したかが明らかになってしまい、今後の自衛隊活動に支障が出てしまうというのである。だから今のところ、間接証拠、状況証拠しか出さない。日本側は、仮に直接証拠である電波情報を出すにしても、非公開の協議の場で出すというのであるが、そのこと自体、韓国側は拒否している。

今回、火器管制レーダー照射事件を解決する裁判所のような機関が存在し、軍事専門家等が裁判官の役割を果たして日韓いずれの主張に理があるのかを判断してくれるのであれば、日本側の提出する間接証拠、状況証拠によって日本側の主張に理があると判断してくれるのかもしれない。日本の裁判所においても、間接証拠、状況証拠から事実を推認していくことが裁判官の腕の見せ所と言われている。直接証拠などは、なかなか存在せず、世の中にある証拠の多くは、間接証拠、状況証拠だといっても過言ではない。

もちろん、間接証拠、状況証拠だけで、有罪、特に死刑を伴う重罪を認定することは慎重でなければならない。しかしあらゆる事件について、間接証拠、状況証拠を一切使ってはならないとなると、事件解決が不可能となる。ゆえに裁判官が、間接証拠、状況証拠をどのように用いるかが重要になってくるのである。

ただ、これはあくまでも裁判所のような第三者的な機関が最終判断を下す場合の話であって、今回の火器管制レーダー照射事件のように、第三者が最終判断を下すわけではない場合、すなわち日本と韓国という紛争当事者のみで、自分の主張を相手に認めさせなければならない場合には、力ずくで自分の主張を相手に飲ませるか、相手が絶対に反論できないような証拠、すなわち「完璧な直接証拠」を公開で突き付けるしかない。間接証拠、状況証拠を突き付けても、それをうまく使って事実を認定してくれる第三者が存在しないので、相手が事実を認めない限り紛争は解決しないからである。