英国のEU(欧州連合)離脱問題が暗礁に乗り上げている。このままでは「合意のない離脱(ノーディール)」の可能性も拭えない。もしそうなれば英国だけでなく、世界同時株安につながる恐れがある。英国に拠点をもつ日本企業は撤退を検討するべき時期に来ている――。

メインシナリオは離脱交渉の延期

英国のメイ首相(写真)はEU離脱に関する協定案の採決を先送りしたが、議会で承認される可能性は限りなく低い(写真=AFP/時事通信フォト)

英国のEU(欧州連合)離脱問題が暗礁に乗り上げている。英国とEUは11月25日のEU臨時サミットで、英国のEU離脱に関する協定案と将来関係に関する政治宣言案で合意に達した。この離脱協定案が英国とEUの双方の議会で承認されれば、英国は当初の予定通りロンドン時間の19年3月29日午後11時にEUから離脱できるはずだった。

ただこの離脱協定案に対して、英議会の風当たりは非常に強かった。メイ首相が率いる与党・保守党の議員でさえ、その多くが反対に回った。その結果、メイ首相は12月11日に予定されていた議会での採決を取りやめ、議会の冬期休暇が明けた後の19年1月中旬まで、採決を先送りすることになった。

1月中旬に離脱協定案が可決されても、3月29日までに離脱の準備が整うか定かではない。また否決されても、英議会の承認の期限である1月21日までにEUと新協定を結ぶことは不可能だ。大多数の関係者が「合意の無い離脱(ノーディール)」を回避したいと考える中で、離脱交渉は延期されるという展開が予想される。

ただ延期されるとしても、それがどの程度になるか定かではない。英タイムズ紙によれば、19年5月に実施される欧州議会選後、初めて欧州議会が招集される7月2日までという観測が一部で浮上しているようだ。とはいえ混迷を極めているこの交渉がわずか3カ月程度の延長で決するとは考え難い。

なおEUは、離脱協定案そのものの再交渉には応じないスタンスを強調している。また延長で合意したとしても、英国が現状の離脱協定案以上に有利な条件を引き出せる可能性は非常に低い。結局のところ、英議会は離脱協定案を受け入れざるを得ないというのがメインシナリオになりそうだ。