できたてをテイクアウトできる魅力
そこで「作りたて」のコッペパンなのだ、と考えることができる。一部のコンビニは「できたて商品」を提供しているが、まだ限定的だ。「できたてコッペパンを提供するカフェ」は、イートインでの魅力だけでなく、テイクアウトの客を集められるという点で、コンビニへ逆襲する店に化ける可能性を秘める。
そしてコッペパンは商材としても勢いがある。40年以上コーヒー業界に関わる専門家は「今後もコッペパンの人気は続くと思う」と話す。理由は「パン食としてのなじみの深さ」「コーヒーとの親和性」だという。また価格が手頃なため、ちょっとしたお土産や自宅用にも利用しやすい。
「パンの田島」は現在、1日当たり客数200~300人(モデル店の平日平均)だが、やり方次第では上積みも期待できそうだ。
パン製造技術を活かしてさらに成長できるか
ドトール日レスHD広報は、「『パンの田島』は、ホールディングスとしての『ドトール+日レス+サンメリー』のシナジー業態であり、ドトールコーヒーショップの業績挽回を狙う業態ではない。このため『ドトールコーヒーが苦戦しているから、コッペパンで挽回』という文脈は成立しない」と説明している。
とはいえ同社は、これまでも新業態に挑戦し、試行錯誤しながら人気店に育ててきた。引いた視点で考えれば、手軽に行けるカフェだからこそ、たえざる改革が必要とはいえないだろうか。つまり、消費者の声をただ「聞く」のではなく、その背景の潜在意識も「聞き分ける」という姿勢だ。できたてのコッペパンは、特に冬は身体も心もホッとする。
サンメリーは焼きたてパンの店も同時展開する。パン製造技術を生かし、カフェ機能も加えた「パンの田島」を新たな収益の柱に育てられるか。現代の消費者は移り気だ。「目新しい」と「飽きさせない」のバランスを取り、持続させる必要があるだろう。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。