元大手銀行支店長でコンサルタントの菅井敏之氏は、磨いておくべきスキルとして「現場力」を挙げる。

「現場力とは、消費者と直につながり、そのニーズを理解していること。社内政治にばかり意識が向かう人は現場を忘れているから、会社の看板を失った途端、相手にされなくなる。しかし消費者と関係を築いておけば、独立して業種や扱う商品が変わっても、お客さんはついてきてくれます。40代を超えて社内のポジションが上がってきたら、『もう1回現場を回らせてほしい』と上に頼むべき。そのほうが社内的な価値が上がり、社外での信用や絆も残りますよ」

※グラフはリサーチプラス調査(2016年10月5~7日)のアンケートデータ。「世帯年収1000万円以上だが比較的生活に余裕がない」「同300万円台以下だが比較的余裕がある」とそれぞれ回答した者(各100名)が設問に応じた回答をもとに編集部作成。

新しい環境に馴染むコミュニケーション能力も不可欠だ。

「定年後、地元の集まりで楽しめれば、自宅の光熱費が節約でき、みんなが持ち寄ったものを食べたりして食費も浮く。そこから交流関係が広がれば、アルバイトの声がかかったりして、意外に臨時収入もある。人に求められている実感もあって、楽しく老後を送れます」(畠中氏)

逆に苦労するのは、新しい環境に適応しようとせず、過去を引きずるタイプ。背広を着て元の職場近くの馴染みの居酒屋に通ったりして現役時代と同じ支出を重ね、ジリ貧になっていく。

「そこで地元の居酒屋に切り替えられる人は、老後貧乏になりません。若いうちから地元の会合やツアーに1人で飛び込んで、会社のバックグラウンド抜きでコミュニケーションを取る技術を磨いておきましょう」(同)

畠中雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー
2000年、駒澤大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。大学時代よりフリーライター、1992年ファイナンシャルプランナー。各メディアに連載多数。セミナー、講演、個人相談など。著書に『サヨナラ お金の不安』『ひきこもりのライフプラン――「親亡き後」をどうするか』(共著)ほか。
 

長崎寛人(ながさき・ひろと)
ファイナンシャルプランナー
1963年、長野県生まれ。NPO法人日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会会員、CFP認定。国内銀行、外資系損害保険会社を経て保険代理店を経営。その後、介護スタッフとして障がい者施設や高齢者介護施設などに勤務、介護に特化したFPに。著書に『脱・老後破産マニュアル』。
 

菅井敏之(すがい・としゆき)
元メガバンク支店長

コンサルタント。1960年生まれ。83年学習院大学卒業、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。東京・横浜で支店長。48歳で退職、起業。アパート経営のほか都内で喫茶店を営む。資産形成や住宅・保険の選び方などで講演・セミナー多数。著著に『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』『お金が貯まるのは、どっち!?』ほか。

 
(撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
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