※本稿は、一田和樹『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)の第2章「フェイクニュースとハイブリッド戦」を再編集したものです。
フェイクニュースへの4つの対策
2018年2月、アメリカ・ニューヨークの研究機関・データ&ソサエティ研究所は『自律航法 フェイクニュース後のコンテンツナビゲーションのあり方(Dead Reckoning Navigating Content Moderation After “Fake News”)』と題するレポートを公開した。このレポートは、多様に解釈されているフェイクニュースという言葉の定義を整理し、その定義ごとに対策や問題点を明らかにしたものである。
このレポートでは、現状はフェイクニュースに対して4つの戦略によって対策が行われていると整理している。まず、信用度とファクトチェックによる対策。日本でもジャーナリストやメディアによるファクトチェックの試みが行われており、一般的な対抗策として世界中にファクトチェック組織がある。これはさらに、「暴露とファクトチェック」、「信頼できるコンテンツ提供者の連合及び暴露とファクトチェック」、「コンテンツ管理とポリシーの拡大」の3つに分類されている。
まず「暴露とファクトチェック」はフェイクニュースのウソを暴き、ファクトチェックで検証することを指す。これを行っている機関の例としては、Fake News Watch, Gawker,ワシントンポストなどがあげられている。
「信頼できるコンテンツ提供者の連合及び暴露とファクトチェック」は、前述のファクトチェックに加えて、フェイクニュースのない信頼できるコンテンツ提供者の連合を作ることの合わせ技である。First Draft/CrossCheckが代表例で、日本にも2017年6月21日(NPO化は2018年1月11日)に発足したファクトチェック・イニシアチブがある。
根本的な解決が難しい4つの理由
「コンテンツ管理とポリシーの拡大」は、コンテンツの管理強化により、フェイクニュースを排除する。さらにふたつに分けられ、プラットフォームを提供しているツイッター、グーグルニュース、フェイスブックのような企業が行うものと、そうではない組織Trust Project、News Leadership Councilなどが行うものがある。
これらの「信用度とファクトチェック」戦略には次の問題がある。いずれも本質的な問題であり、根本的な解決は難しい。その理由として大きく4つがあげられている。
・過激なサイトは信用やファクトチェック組織を破壊できる
・検証結果を発表すること自体がフェイクニュースを広めることになり、より身近なものになってしまう
・ファクトチェックは高コストで限られたコンテンツしか扱えない
・誤情報の拡散は速く検証が追いつかない