なぜ二郎は二郎であり続けるのか
「ラーメン二郎が提供しているのはラーメンではない」
断言するのは信州大学経営大学院准教授の牧田幸裕氏だ。
「二郎はどこまでいっても二郎でしかありません」
事実、数多くのラーメン屋がしのぎを削る首都圏にあって、「ジロリアン」なる熱狂的な常連客が「ラーメン二郎」には押し寄せる。シンボルは、こってり濃厚、ボリュームたっぷりのラーメン。麺が茹で上がった後に、「ヤサイマシマシ・ニンニク・アブラ・カラメ」と呪文のように唱えれば、麺が隠れるくらい山盛りのキャベツともやし、ニンニク、背脂、醤油がトッピングされたラーメンが提供される。
「お客は腹を満たすためだけでなく、『二郎を食べた』という達成感を得たくて二郎に来るのです。そうして、ほかのラーメン店とは一線を画し、二郎は唯一無二のポジションを確立しました」
1968年の創業から、現在では都内を中心に全国約40店舗を展開。多くの店舗には、行列ができる。客は主に1人。食べているときはみな寡黙だ。
「そもそも、二郎は非常にボリュームがあり、悠長に話しながら食べていると満腹中枢が刺激され、途中でリタイアを余儀なくされます。メニューは大か小、例外で大を超える『麺増し』もあるが、小でも普通のラーメンの大盛りを優に超えるボリュームのため、ただひたすら麺をすすり、スープを飲むしかないのです」