岸見の答え:感情的に反論したり、くどくど弁解は逆効果

「あいつに限って」と思ってもらえるか

あらゆる人間関係の問題の中で、セクハラ疑惑ほど予防が重要なトラブルはないでしょう。予防のポイントは2つ。ひとつはセクハラの基準をきっちり把握すること。何がセクハラに当たるのか、いまだに多くの男性は無頓着。たとえ悪気はないとしても、「君はいつ結婚するの?」なんていったら即アウトです。「そんなつもりじゃなかった」が通用しないのがセクハラの厄介なところだと心得ましょう。

こういうことにピンとこない人は1度、勤務先の就業規約などを見直しておくことをお勧めします。今は世間的にコンプライアンスも厳しくなり、「これぐらいならセーフ」というボーダーラインが、どんどん下がっている。社内でセクハラの相談があれば、会社はしかるべき対処をしなければならないことが労働契約法でも定められていますから、会社にも守ってもらえません。

もうひとつの予防原則は、日頃から上司や同僚と信頼関係を築いておくこと。間違っても「だらしのない奴」という印象を持たれてはいけません。セクハラ疑惑をかけられたとき、「あいつに限ってそんなことをするはずがない」と思ってもらえるか、「ああ、やりかねないな」と思われるかは、ひとえに日頃の振る舞いにかかっているのです。

もしセクハラを疑われた場合、本当に潔白なのであれば、事実無根だとはっきり否定するしかありません。感情的に反論したり、くどくど弁解したりすると、身に覚えがあると疑われて逆効果になります。

「勤務先のガイドラインをチェックしましょう」
佐々木常夫
佐々木マネージメント・リサーチ代表
1944年生まれ。69年、東京大学経済学部卒業後、東レに入社。2001年に同期トップで取締役に。03年、東レ経営研究所社長に就任。10年より現職。
 

岸見一郎
哲学者
1956年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。京都聖カタリナ高校看護専攻科非常勤講師。共著書『嫌われる勇気』は155万部のベストセラーに。
 
(構成=小島和子 撮影=大沢尚芳、森本真哉 写真=iStock.com)
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