※本稿は、「プレジデント」(2017年3月20日号)の掲載記事を再編集したものです。
【QUESTION】自分の悪い噂が流れている
佐々木の答え:噂のピークが過ぎるのを待ち、ワンテンポ置いてから説明
無実が証明される公算を考えて行動
あるとき、こんな噂が流れたことがありました。「佐々木さんは言うことがころころ変わる。朝令暮改でやりにくい」。私は仕事の指示は手短にパッパと出すタイプ。「まずはこれを最優先してやりなさい」と命じてからほどなくして、「やっぱりこちらから先に着手してほしい」と指示を変えることがある。それに不信感を募らせた部下が流した噂でした。「日頃、仕事は計画的に進めなさいという一方で、自分は一貫性がないじゃないか」というわけです。
ビジネスの状況は刻一刻と変わりますから、状況に合わせて対応を変えざるをえないのは当然のこと。こういう場合はきちんと説明しないといけない。初めに計画を立てる重要性に変わりはないが、柔軟に段取りを変更しなくてはならないことも多い。結果的に朝令暮改となることも必要なのだと説きました。その部下はそれで納得してくれました。
仕事の考え方や方法論について悪い噂が出たとき、それが事実と違うのであれば、グズグズせずにすぐ手を打つこと。噂の発信源がわかれば、その人に面と向かって話します。出所がはっきりしなくても、経路に心当たりのありそうな人に尋ねれば、大抵は原因が見えてくるものです。
一方、業務に直接的な影響が出そうにない場合なら、自分自身のよからぬ噂でも、基本的には放っておいて構いません。しょせん、噂は噂。いちいち躍起になる必要はない。
私も以前、職場の若い女性部下と不倫の噂を立てられたことがありました。出所は同じ部署の男性社員で、どうやら彼女に好意を寄せていたらしい。それもあってか、私が彼女と仕事帰りに2人で会っていることを見つけた彼は、「あの課長は若い女性と不倫をしている。けしからん」とあちこちにいって回ったようです。
その噂に気づいた私がどうしたかというと、何もしませんでした。というのも、噂が事実無根であることは、当の本人がよく知っていたから。私は単に彼女の恋愛相談に乗っていただけです。恋愛が成就して、いずれ結婚ということにでもなれば、周囲にもわかることだと思って黙っていました。実際、数カ月後に2人はめでたくゴールイン。そこで噂はデタラメだったことがはっきりした。
このとき私が動じなかったのは、いずれ事実が明るみに出ることが予想できたから。単に自分が無実だと知っているだけでは、噂が別の噂を呼び、つまらない面倒に発展しないとも限らない。噂への対応を考える際は、無実が証明される公算がいかほどかも考える必要があります。
そのうえで、きちんと釈明するときにもコツがあります。大慌てで否定したり、取り乱したりして火消しに走らないこと。上手にやり過ごすためには、噂のピークが過ぎるのを待ち、ワンテンポ置いてから淡々と落ち着いて説明するのが得策。そのほうがはるかに信頼されやすく、ムダな火の粉を浴びずに済むのです。