最も重要なのは「2019年10月」の経済環境

問題は、消費税率引き上げのタイミングだ。2019年10月の経済環境がどのような状況になっているか、それほど楽観はできない。

経済環境が良好であれば、これまでの経験から言って1年程度で消費税率引き上げのマイナスを吸収することは可能だろう。2014年4月の消費税率引き上げの後、2016年ごろからわが国の景気モメンタムは持ち直した。それは、消費者のマインドが従来よりも高い消費税率に慣れ、消費水準が従来の水準に回復したことといえる。

重要なポイントは、2019年10月の経済環境だ。わが国の経済は、国内事情によって改善しているとは言いづらい。それよりも海外の要因によって、国内景気は改善してきた。最大のポイントは、2019年10月の米国をはじめとする世界経済がどうなっているかだ。

2009年7月から米国経済は回復してきた。足元、中国経済が減速しているにもかかわらず世界経済全体が相応の安定感を維持しているのは、米国経済が回復基調を維持しているからだ。世界経済の中で、米国は独り勝ちの状況にある。ただ、未来永劫、景気の回復が続くことはあり得ない。

必ずしもベストのタイミングとは言えない

現状の経済環境と過去の景気循環を基に考えると、米国経済は2019年の後半には減速することが予想される。GDP成長率が2期続けてマイナスになる景気後退が実現するとは想定しづらいものの、状況によっては米国経済の成長率が実力=潜在成長率を下回ることもあるだろう。

米国経済の減速が鮮明になれば、海外経済に依存して回復してきたわが国経済の減速は避けられないはずだ。状況によっては、想定以上に国内の企業収益が減少する恐れもある。その意味では2019年10月の消費税率引き上げは、必ずしもベストのタイミングとは言えないかもしれない。

ただ、安倍政権として実行を明言している以上、最大限の対策を打ったうえで消費税率の引き上げを実行し、社会保障関連の財源を増やすことが望ましい。長めの目線で考えても、消費税率の引き上げによる財政の健全化は必要だ。

一方、世界経済が大きく落ち込むような事態になった時は、情勢を冷静に判断して、場合によっては再延期という決断を下すことも考慮すべきだろう。

真壁昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年、神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=時事通信フォト)
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