東京五輪後に都心部の「不動産価格急落」は現実的ではない

東京が2020年の夏季オリンピック・パラリンピック開催地になることが決定された直後から、「東京都内の不動産価格は東京オリンピックまでは上昇し続け、オリンピック後に大きく下落する」という、まことしやかなうわさが流れ始めました。今や多くの人がそれを信じて疑わない状況ですが、実際のところはどうなのでしょうか?

結論から言うと、私はこの説に懐疑的です。ご存じのとおり、オリンピック開催地では、事前に数年かけて競技場や選手村の建設、インフラの整備を行います。その莫大(ばくだい)な公共投資の影響で、地価が上昇したり、雇用が創出されたりして、一時的に景気が良くなるというのは、どこの国にも共通する現象です。

ただ、そうした需要が途絶えるオリンピック終了後の景気動向は、国ごとに異なります。たしかに、景気が悪化して、不動産価格も急落した国はあります。

しかし、近年のオリンピック開催国の景気動向をウオッチすると、一時的な減速はあるにせよ、比較的軽微な打撃にとどまっている国も多くあります。景気と不動産価格はほぼ連動しますが、12年にロンドンオリンピックを開催した英国では、後に政府が「オリンピックが英国不動産市場に与える影響はなかった」と発表しています。

影響が限定的だったのは、いずれも経済規模が大きな国です。オリンピックの経済効果が高いといっても、もともとの経済規模が大きければ特需部分が剥落したところで深刻な不況に見舞われるリスクは(一般にイメージされるほどには)高くないのです。

よって、日本においてもオリンピック後に不況になり、都心部の不動産価格が全般的に急落するというシナリオは、あまり現実的ではないと言えそうです。「オリンピック後に不動産が安くなってから家を買おう」と考えているのなら、いったん仕切り直したほうがいいでしょう。

それでは、不動産の買い時とはいつなのでしょうか。どんな不動産を買いたいかにもよりますが「都区部の駅近で新築マンションがほしい」といった場合、当面値下がりは望み薄です。

昨今、不動産デベロッパーは慢性的な人手不足による建築コストの膨張などを背景に、新築マンションの供給量を絞ったうえで、一等地物件の比率を高めています。不動産経済研究所の調査によると、18年3月現在で首都圏の新築マンションの平均価格は6000万円超。今後も状況が大きく変わる要素はないので、価格は高止まりしそうです。こうした物件を狙うなら、住宅ローン金利が底値をキープしているうちに、早めに行動したほうがベターとも言えます。