自宅を売却した後、家賃を払ってその家に住み続ける「リースバック」をめぐるトラブルが増えているとして、国民生活センターが注意を呼びかけている。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「買取価格は一般的な相場の6~7割と低い傾向がある。周辺相場のリサーチや家賃を払い続けられるかの試算を重ねて判断したほうがいい」という――。
住宅購入契約について話し合う不動産業者と顧客
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「リースバック契約」の相談が増えている

今年5月、国民生活センターが「リースバック契約」に関する注意を呼びかけ、話題になりました。「リースバック」をはじめて聞いたという方にもぜひ知ってほしい、落とし穴を紹介します。

「リースバック」とは、マンションや一軒家といった持ち家を不動産会社などに売却して現金を得た後、同じ家に賃料を払って住み続けるサービスのこと。「売った家に賃貸で住み続けるってどういうこと?」と思われるかもしれませんが、まとまった現金を確保しつつ住み慣れた家で過ごすことができるため、環境を変えずに現金を確保したい方にとっては魅力的なサービスと言えるでしょう。また、家の所有権はリースバック事業者となるため、契約条件によっては、固定資産税などの負担もなくなります。

では、リースバックで今、どんなトラブルが起きているのでしょうか。 国民生活センターによると、リースバックに関する相談が近年急増しており、2019年には24件だった相談件数が2024年には239件と、5年間で約10倍に跳ね上がっています。

買取価格は一般的な相場の「6~7割」が最多

職業柄、不動産関係の方とお話しすることが多い私も、コロナ前まではほとんど利用者の声を聞いたことがなかったことを考えると、コロナや昨今の物価高騰によって、資金調達の手段として活用する方が増えてきたのではないかと思いました。

実際、国土交通省が昨年12月から今年1月にかけて、宅地建物取引業者を対象に行った調査によると、契約者の利用動機として、「生活資金の確保」「住宅ローンやその他債務の返済」が上位を占めており、資金確保のためにリースバック契約を行った方が大半を占めていることがわかります。

しかし、国交省の調査では、リースバックで自宅を売却した場合、買取価格は一般的な相場の「6~7割」と回答した事業者が最も多いこともわかっています。というのも、物件の所有者となった不動産会社は基本的に再販を目的としているため、リフォーム代などを見越した値付けをしていると思われます。また、同調査では、事業者はリースバック期間中、賃貸以外の運用ができないことを踏まえると、利回りなどを考慮した価格査定を行っているのではないか、とも推測していました。