ドミナントは「緊張」を与え、Ⅴ(ソ・シ・レ)が代表的だ。サブドミナントは、トニカよりもやや緊張感があり、「外交的」「発展」のイメージだ。IVのほか、II、VIもサブドミナントの機能を持つ。

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この和音の流れがカデンツで、カデンツには「T→D→T」「T→S→D→T」「T→S→T」の3種類がある。日本人になじみ深いのは「T→D→T」で、学校の朝礼の「起立→礼→直れ」の進行だ。

クラシック音楽の演奏とは、極論すれば、このカデンツで「緊張→緩和」の自然な流れをつくることだと私は考えている。ある曲を聴いて、非常に感動するところがあれば、そこには必ずカデンツがあるといっても過言ではない。そして、楽譜を分析すれば、綿密に計算された論理があることがわかる。つまり私たちが音楽を聴いて感動するのは、きちんとした論理的裏づけによるものなのだ。

スコアを読むことは、数式を読み解くことに似ている。数式には必ず論理があり、メッセージが込められている。そのメッセージを感じ取る感性がない数学者や物理学者は一流の研究者にはなれないと思う。事実、数学者の広中平祐氏は音楽家を目指していたことがあるほどで、アインシュタインも熱心な音楽愛好家だった。

永野裕之
永野数学塾塾長
1974年、東京都生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒。大人の数学塾・永野数学塾塾長。著書に『統計学のための数学教室』『ふたたびの高校数学』『東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた数に強くなる本 人生が変わる授業』など。
(構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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