学費以外に出ていく諸経費も

「ザ・ナイン」と呼ばれる、英国の中でもトップクラスの学校の学費を調べてみました。寮生活を送るケースと、自宅から、あるいは滞在しているガーディアン(実家が遠方で、学校に通えないような場所にある生徒の現地の保護者、身元保証人。ガーディアンにも支払いが必要)宅などから通学するケースとでは違いがありますが、寮暮らしの生徒の場合は、平均的に日本円で年間500万円程度(1ポンド=約150円と考えた場合)かかります。そのうえ、入学時には、さらなる諸経費に加え制服や運動着、寮生活に必要なあれこれをそろえなければならず、それにはまた別途お金がかかります。

生徒の受けている授業によっては、美術を学んでいればフランスへ、歴史を学んでいればギリシャへ、などと学業に関連するスクール・トリップや、スポーツ、音楽での海外遠征も珍しくなく、そういったことにかかる費用も親の負担となります。それらを考えると、13歳から18歳まで通うと、想像以上の金額が出ていきます。ある人は、学費捻出のため自宅を売り、アパートへの引っ越しを考えたこともあると話していました。

それだけの価値がある教育、施設、教師陣

しかし、日本では考えられないような充実した設備や教師陣の質、そこでしか出会うことのできない独自の人間関係やさまざまな体験をプライスレスと考えれば、この高額な出費にも納得がいくのではと思います。

パブリック・スクールには、スポーツや芸術分野についても、公立よりもはるかにバリエーション豊富な内容と、生徒が興味を持てばすぐにレッスンを受けられる環境があります。ナショナルチームが使用するクラスのラグビー場やゴルフコースを持つ学校もあります。特殊な民族楽器を使うときでも、可能な限り学校が教師の手配をしてくれるなど、日本では考えられない対応です。

そのほか、私立校では整備されていることが多いジャンルのスポーツで使う施設や器具が公立校ではそろっていなかったり、コーチも学校ではなく生徒の家族が探して謝礼を用意しなければならなかったりと、公立校には意外と面倒な事情があるようです。

そのため、レベルの高い公立校に入学するために、かなり家賃の高いエリアに引っ越すのか、あるいはパブリック・スクールの高い学費を払うのかを天秤にかけて悩む親もいるのです。

石井理恵子(いしい・りえこ)
ライター/エディター
雑誌編集者を経てフリーランスに。おもにペット、映画、TV、英国をテーマに執筆活動中。著書に『英国フードA to Z』(三修社)、『英国男子制服コレクション』『鉄道ねこ』『パブねこ』(新紀元社)、『2度目からのロンドン・ガイド』(河出書房新社)、『美しき英国パブリック・スクール』(太田出版)ほか。英国についてのあれこれについて発信するブログ『英国偏愛~ネコを旅して英国ぐるり』を公開中。
(編集=的場容子)
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