[3] 障害を理解し、全力で立ち向かえ

シニシズム(醒めた態度)は、どの企業でもイノベーションや変革の最大の障害の1つだ、とヤマシタは言う。彼は、疑念や懐疑には真正面から立ち向かうのが1番だとして、コンパックとの合併後のヒューレット・パッカード(HP)で行った仕事を例に挙げる。

両社の社員を団結させ、両グループの関心事を検討するために、HPは「ファースト・スタート」と呼ばれる一連のワークショップを計画した。ここで両社の社員は、それぞれの事業部門が直面すると思われる問題に着手するよう求められた。

検討を進めるうちに、社員たちは、何が失敗するおそれがあり、それをどのように修正すればよいかを話し合った。するとすぐに、「障害になるおそれのある問題は何か」という会話になった、とヤマシタは語る。「文化の違いや方法論から始めるのではなく、参加者は最初から問題と向き合って、協力してそれを解決するにはどうすればよいかを議論した。……そうすることで、単に障害について話し合うのではなく、新しい協力の方法を構築していった」。

こうした状況では同僚からの圧力が有効なことがある、とヤマシタは言う。反抗分子的な社員は、「このやり方が気に入らなければ、ほかにどんな解決策があるか」と切り替えされるだろう。

時間的なプレッシャーも効果がある。「会社がイノベーションの計画を立て、社員が製品発売までのカレンダーの空白を埋めるのは自分たちの責任と認識していれば、いい仕事をしようというプレッシャーになる」と彼は語る。

イノベーティブな文化を「根づかせる」ためには、そうやって発売まで持っていくことがきわめて大切だと、ヤマシタは言う。

「これがディシプリンだ」と彼は言う。「計画を立て、環境を変え、集中し、かつミッションに忠実であり続ける。気を抜いてはいけない」。

「また、うまくいったことについては必ず誉めること。それが、変革とイノベーションは可能だという目に見える証拠になる」

(翻訳=ディプロマット)