この低迷期に劇的に業績を回復させる妙薬はない。打つ手が限られている中で、勝者と敗者を分けるのは、戦略そのものよりそれを実行できるか否かだ。戦略は極力単純にし、実行過程を追跡し、成果を評価することから始めよう。
戦略計画だって会社は救えない
「実行」はほとんど知的敬意を払われていない分野である。それに対し、戦略計画に関しては、膨大な量の文献が書かれている。戦略計画は知的活動の中で最も価値あるものとされる創造性に見返りを与えてくれるからだ。
だが、経験豊富な組織のトップは、どれほど創造的で先見的な戦略計画でも、行動に移さなければ意味がないことを知っている。
とくに現在は、景気の低迷が続き、専門家たちがまだ次の偉大な経営戦略を見つけだしていない中で、実行が重要性を増している。実行こそが、厳しい時代に繁栄する企業と倒産する企業を分かつものだ。
最高にすばらしい戦略でも実行段階で失敗するのはなぜだろう。専門家も現場の人々も口をそろえて、それはプロセスに問題があったからだと言う。つまり、手順が綿密に練り上げられていなかったとか、システムの欠かせない一部が欠けていたとか、システムが頻繁かつ徹底的にモニターされていなかったといった問題のせいなのだ。
実行段階では、会社の戦略に関するおおまかな概念的理解を、なじみのあるプロセスに落とし込んでいくことが要求される。誰がどの作業をどんな順序で行うか、各作業にはどれくらい時間および費用がかかるか、また、それらの作業はその後の活動にどう影響するかといったことである。以下にこの変換作業を助ける3つのアドバイスを挙げてみよう。