顧客のニーズに応えて新しい商品やサービスを開発する不断の努力が、かえって仇になることがある。苦労して創出した市場を後発のライバルに奪われてしまうのだ。この「イノベーターのジレンマ」をいかに解決し、成長の原動力を確保するか。

得意客のニーズを満たすために既存の製品やサービスの改善を続けていくと、企業はやがて「イノベーターのジレンマ」にぶつかる。あらゆることを正しく行うことによって、新しい企業が自社の市場を奪う機会を生み出すのである。

最近の調査は、この問題がシステム的なものであることを示している。企業には、イノベーションのプロセスを導き出してイノベーション主導の成長ビジネスを何度も生み出していく方法が必要だ。今日の経営者には、イノベーションに関わる意思決定の指針となるしっかりした理論がこれまで以上に必要になっている。

以下に記す6つの教えは、経営者が新成長ビジネスを築くための正しい決定を行うのに役立つはずだ。

[1] 破壊的イノベーションが成長を加速させる

新成長ビジネスを生み出そうとするとき、2つの選択肢がある。1つは、持続的イノベーションによって既存の市場を競争相手から奪うこと。もう1つは、新しい市場を生み出すか、もしくは現状では収益に結びついていない顧客層に食い込むような破壊的(=非持続的)イノベーションで競争相手に立ち向かうことだ。われわれの調査は明らかに、後者を追求すべきだと示唆している。

持続的イノベーションは、既成の製品やサービスのパフォーマンスを主要市場における主流顧客が従来から評価してきた次元に沿って改良するものだ。パソコンをより速く動かせるマイクロプロセッサーや、ノートパソコンをより長時間作動させられるバッテリーなどがこれに入る。

企業は、短期的に競争力のある持続的イノベーション製品を次々に発売することによって、成長軌道を進んでいく。しかし、拙著『イノベーターのジレンマ:新技術が大企業に失敗をもたらすとき(The Innovator's Dilemma: New Technologies Cause Great Firms to Fail)』 (Harvard Business School Press, 1997)で述べたように、産業界は消費者が新製品を受け入れる速度を上回る速度でイノベーションを進めるので、そこに、破壊的イノベーション製品が台頭する機会が生まれる。持続的イノベーションは企業を従来の業績軌道に沿って進ませるが、破壊的イノベーションはまったく新しい業績軌道を築く。