[5] なんでもかんでも統合するな

イノベーション主導の成長事業を計画するときに重要な決定事項は、最適範囲を決めることだ。つまりどの部分を社内で行い、どの活動はアウトソースするかを判別するのである。

答えはともすると時代の流行に左右される。60年代には誰もが、IBMの総合性こそ疑問の余地のない競争優位だと思っていた。IBMは産業のバリューチェーンのきわめて広い範囲を自社でコントロールしていたので、どこよりもいい製品をつくることができた。そのため、企業はIBMに倣って事業を統合しようとした。90年代に入ると誰もが、アウトソーシングを多用するシスコの分散型ビジネス・モデルこそ疑問の余地のない競争優位だと思うようになった。

最も重要なのは、会社が統合すべき状況とスペシャリストになるべき状況を見極めることだ。製品が顧客のニーズを十分満たすところまで行っていない場合は常に、統合にメリットがある。

一方で、企業は、顧客が重視する次元に沿ってパフォーマンスを高めるインターフェースを統合しなければならない。産業の草創期には、一般にロー・パフォーマンスを高める設計、組み立てなどのインターフェースを統合する必要がある。製品の基本性能が顧客の要求水準以上になったら、企業は利便性やカスタマイゼーションで勝負しなければならなくなる。このような状況では、スペシャリスト企業が登場してきて、必要な統合の場が顧客とのインターフェースに移行するのである。たとえばデルは、顧客とじかにやり取りすることによって、顧客が求めている利便性とカスタマイゼーションを提供して成長することができた。