「できる」会社はあらゆる機会を成長に結びつけることに長けている。経費を削減する場合も、ただ減らすだけでなく、そこに付加価値をつけながら新しいビジネスモデルを構築し、商機をつくり出す。その秘訣とは。
経費抑制を維持することは、大方の管理職にとっては、憂鬱な話である。コストカットへの取り組み方は、おしなべて意欲に欠け、業績悪化のため仕方なく……といった態度が主流である。つまり、コスト抑制は、経営理念というよりは単なる作業としてとらえられる。しかし競争力のあるトップ企業をよく調べてみれば、経費の抑止が本業の一部になっていることがわかるだろう。これらの企業は、コスト削減を競争優位となるような会社の強み、すなわちコア・コンピテンシーに転換する中で、成長への道を見出したのだ。
たとえば、米国のスーパーマーケット・チェーン、クローガー社。従業員28万8000人、営業経費90億ドルの同社は、1990年代半ばにセルフサービスのレジを実験的に始めた。レジ係が減れば、労働コストも削減されるというわけだ。だが、これが直ちに意図せざる成果をもたらした。スピード、プライバシー、そして便利さが消費者に受け、「自分で精算できるレジがあるのでクローガーに行く」と答えた顧客が33%にも上った。こうして、セルフサービスレジは、業績アップにも貢献した。
業績のよい企業は、好不況を問わず、早期に景気後退を察知し、素早く行動を起こし、事業が好転し始めても、執拗にコスト削減に努める能力を開発している。ベイン・アンド・カンパニー社の調査によれば、業績トップの企業は、利益改善のおよそ半分が直接的なコスト削減によるものだという。本能的にコスト削減を図る企業は、クローガー社が学んだように、予期しない機会を生み出す。急激な景気の落ち込みにあっては、このような本能はビジネスの安定化を助け、次の成長段階に向けたグラウンドワークに役立つ。
理想は、企業がコスト抑制体質を確立し、継続的な経費節減があらゆる必要な節約を実現できるということだ。しかし、転機となるような出来事――たとえば市場の崩壊、新技術の出現、突然の競争激化など――に直面した場合は、より計画的で手順にのっとったアプローチが求められる。
筆者らは長年にわたり、企業にコスト抑制についてアドバイスを行い、主要なコスト削減策に取り組んできた中で、同じ原則が異なる状況のもとで通用することを繰り返し確認してきた。コスト抑制に長けた企業は、コスト削減と将来の成長との関連性を明確にし、率先してコスト削減に努める強力な推進派を見つける。彼らは最初から迅速で厳格な分析を行う。そしてしっかりと経費削減の過程を監視し点検を行う。